研究課題/領域番号 |
16K01655
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
寳學 淳郎 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (70313822)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | スポーツ史 / 社会主義国家 / 東ドイツ / スポーツ振興 / スポーツ関係規定 |
研究実績の概要 |
①寳學淳郎、私の東ドイツスポーツ史研究、体育史学会第5回大会、2016年5月。主に研究方法論を中心に「私の東ドイツスポーツ史研究」というテーマで講演した。社会主義国家であった東ドイツのスポーツ史を再構成するためには、スポーツ振興の理念・方策と現実の差異を検証する必要性などを指摘するとともに、東ドイツスポーツ関係資料の現状などを報告した。②寳學淳郎、1970年代のドイツのスポーツ政策に関する研究:連邦政府スポーツ報告書を手懸りにして、日本体育学会第67回大会、2016年8月。東ドイツのスポーツ政策を明らかにするためには、歴史的背景をともにする西ドイツのスポーツ政策と比較検討することも重要である。本研究では、1970年代の西ドイツのスポーツ政策を検討した。結果、1970年代の連邦及び関係各省等のスポーツ政策の内容、スポーツ支援を協力的、円滑に行うための組織づくりなどが明らかとなった。③寳學淳郎、旧東ドイツスポーツ関係者の言説:インタビュー調査を中心に、平成28年度筑波大学体育・スポーツ史研究会、2017年1月。東ドイツスポーツ史の再構成のためには、整備・公開されつつある公文書類の内容と旧東ドイツスポーツ関係者などによる時代の証言者の言説を絶えず付き合わせる必要もある。本研究では、彼らが東ドイツスポーツ及びの周辺について語るものを検討した。調査では、東ドイツのスポーツシステムやスポーツ関係規定の変容など我々が知ることのなかった内容も語られた。④寳學淳郎、私の東ドイツスポーツ史研究、体育史研究、第34号、2017年3月。本論文は①を纏めたものである。⑤寳學淳郎、旧東ドイツスポーツ関係者の言説:インタビュー調査を中心に、東北アジア体育・スポーツ史研究、第3号、2017年3月、印刷中。本論文は学会依頼原稿であり、③を纏めたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.ドイツ連邦公文書館などにおける東ドイツスポーツ関係資料の把握:平成28年度の第一の目標はドイツ連邦公文書館内に保管、整理されている東ドイツスポーツ関係資料の状況を把握することにあった。当初外部から検索できないので平成28年度に同館に赴き、館内で1952年から1970年まで東ドイツにおけるスポーツ関係の最高統括機関であった国家身体文化・スポーツ委員会の関係資料(以下、DR5文書と表記)などを内容的及び量的に把握し、リストを作成しようと考えていたが、同館と連絡をとった結果、DR5文書の目録シートがネットで公開されていることを知った。この手間がやや進捗状況が遅れている主な理由である。そこで昨年度には現地に赴かず、まずはDR5文書の目録シートをすべてダウンロードした。結果、DR5文書は、シート数が3800以上と膨大であること、大きくは①国家委員会及び内閣官房の指導と組織②計画と報告③スポーツ種目・領域の促進等8項目に分類されていること等を確認した。2.資料の確認とリストの作成:研究計画では、国家身体文化・スポーツ委員会以外に主なスポーツ関係規定を決議したSED中央委員会、人民議会等のスポーツ関係資料がどれほど存在するのかなども平成28年度に調査したいと考えていた。しかし、ドイツ連邦公文書館所蔵DR5文書だけでも膨大であることが明らかになったのでそれらは行わず、ネットで公開されているDR5文書の目録シートのリスト作成を綿密に行うこととした。3.分析枠組みの構築:平成28年度には、東ドイツスポーツ史、東ドイツスポーツ政策に関係する先行研究や参考文献をできる限り網羅的に収集した。4.海外研究協力者との協力:平成28年度には東ドイツスポーツ科学の中心地であったドイツ体育大学の学長も務めたN.ロガルスキーとメールでやり取りし、東ドイツスポーツ史研究の状況に関する情報などを入手した。
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今後の研究の推進方策 |
1.リストの完成:今後の研究課題の第一は、目録シートのリストを完成させることである。本研究では主に1949年から1970年までの時期が対象となるが、今後の東ドイツスポーツ史研究のためにも全シートのリストの作成を行う。現在は約半分を終えており、夏までには完成予定である。 2.資料の選定と収集:リスト作成後、1949年から1970年を中心に東ドイツスポーツ関係資料を収集することになる。「東ドイツにおいて政権政党であったSED、国家的機関、大衆団体であるスポーツ統括団体などによって出されたスポーツに関係する諸規定に示されるスポーツ振興の理念や方策が、どの程度まで実現されたのか、それがどのように変容したのかを、東ドイツが建国した1949年から1970年までの時期を中心に、ドイツ連邦公文書館所蔵資料を手掛かりに明らかにし、その背景を検討する」という本研究の課題を解決できる資料を収集したいが、DR5文書だけでもすべてを収集することは予算的に量的に不可能であるので、第一に、DR5文書の中で、東ドイツの主なスポーツ関係規定に直接関連する資料を収集し、第二に、目録シートの①国家委員会及び内閣官房の指導と組織、②計画と報告の資料を収集したい。 3.分析枠組みの構築と海外研究協力者との協力:平成29年度においても、分析枠組みの構築に役立てるために、今まで見落としている可能性のある東ドイツスポーツ史、東ドイツスポーツ政策に関係する先行研究や参考文献をできる限り網羅的に収集したい。また平成29年度においても、海外研究協力者と情報を交換しながら研究の質を高めていきたい。 4.資料の分析をと学会発表:平成29年度以降には収集した資料の分析を中心としたい。できれば、平成29年度末にはその時点における研究成果を発表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の第一の目標は、ドイツ連邦公文書館内に保管、整理されている東ドイツスポーツ関係資料の状況を把握することにあった。当初、外部から検索できないので、平成28年度に同館に赴き、館内で1952年から1970年まで東ドイツにおけるスポーツ関係の最高統括機関であった国家身体文化・スポーツ委員会の関係資料などを内容的及び量的に把握し、リストを作成ようと考えていたが、同館と連絡をとった結果、DR5文書の目録シートがネットで公開されていることを知った。そこで、平成28年度には現地に赴かず、まずはDR5文書の目録シートをすべてダウンロードするとともに、目録シートのリスト作成に主に従事した。平成28年度に海外旅費がないこと、現地での資料収集費がないことはそのためである。それらで使用していない費用を平成29年度に持ち越したために次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
リスト作成後、1949年から1970年を中心に東ドイツスポーツ関係資料を収集することになる。予算内でできるだけ数多くの資料を収集する必要があるが、ドイツにおいて収集した方が安くすむのか、日本から収集した方が安くすむのかをドイツ連邦公文書館に問い合わせた上で判断したい。ドイツにおいて収集した方が安くすむ場合には、次年度使用額をドイツへの旅費・滞在費・資料収集費に当てたい。日本から収集した方が安い場合には、主に資料収集費に当てたい。
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