研究課題/領域番号 |
16K01655
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
寳學 淳郎 金沢大学, 国際基幹教育院, 准教授 (70313822)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 社会主義国家 / 東ドイツ / スポーツ史 / スポーツ振興 / スポーツ関係規定 |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ再統一後20年以上の時を経た今、東ドイツにおいて政権政党であったSED、国家的機関などによって出されたスポーツ関係規定に示されるスポーツ振興の理念や方策が、どの程度まで実現されたのか、それがどのように変容したのかを、東ドイツが建国した1949年から1970年までの時期を中心に、ドイツ連邦公文書館所蔵資料を手掛かりに明らかにし、その背景を検討することを課題としている。 2017年度の研究実績の概要は次の通りである。 1.寳學淳郎、1950年代前半における東ドイツのスポーツ政策に関する研究:スポーツ計画(1953-1955年)の内容と特徴を中心に、平成29年度筑波大学体育・スポーツ史研究会、2018年1月、全13頁(査読無し)。本発表では、ドイツ連邦公文書館に所蔵されている1953年から1955年に国家委員会会議等で使用された「東ドイツにおける身体文化・スポーツ促進長期計画」(以下、スポーツ計画)に注目し、その構成、内容、特徴などを明らかにすることによって、1950年代前半における同国スポーツ政策の一端を検討した。その際、特徴については、前後のスポーツ関係規定との比較から主に検討した。主に次のことが明らかになった。「SED中央委員会の決議」(1951年)からは、ソビエトをモデルとしたイデオロギー教育、スポーツ章、スポーツ等級制度、スポーツ組織再編などの多くの方策が示され、スポーツ分野においてもソビエト追随の傾向が明確に窺えるが、これらのスポーツ計画においても、その傾向は明確に窺えた。一方、「閣僚評議会の決定」(1956年)の特徴の一つは、ソビエトスポーツに引き続き追随しながらも、東ドイツ独自のスポーツシステムを模索し始めていることが窺えることにあったが、これらのスポーツ計画では学校スポーツ共同体の重視など東ドイツスポーツの独自性を窺わせるような内容はまだみられない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.目録シートのリストの完成 平成29年度の第一の課題は、ドイツ連邦公文書館の国家身体文化・スポーツ委員会関係の目録シートのリストを完成させることにあった。まだ修正する必要はあるが、年度末にリストをほぼ完成させた。 2.資料の選定と収集 本研究では、1949年から1970年を中心に東ドイツスポーツ関係資料を収集する。リスト作成の結果、東ドイツ国家身体文化・スポーツ委員会の資料(DR5文書)だけでもすべてを収集することは予算的に量的に不可能であることが判明したので、平成29年度では、第一に、東ドイツの主なスポーツ関係規定に直接関連する資料を収集し、第二に、目録シートの①国家委員会及び内閣官房の指導と組織、②計画と報告の資料を主に収集した。 3.分析枠組みの構築と海外研究協力者との協力 平成29年度においては、分析枠組みの構築に役立てるために、今まで見落としている可能性のある東ドイツスポーツ史、東ドイツスポーツ政策に関係する先行研究や参考文献をできる限り網羅的に収集した。また、本研究は、外国のスポーツを政策史的に研究するものであり、実際に現地で研究活動に従事している海外研究者と情報を交換しながら研究の質を高めていくことが重要である。旧東ドイツスポーツ関係者との交流も必要と考え、世界的に著名であった東ドイツスポーツ科学の中心地ドイツ体育大学の学長であったN.ロガルスキー氏とは、メールでの情報交換を継続している。 4.資料の分析と学会発表 資料収集とともに、収集した資料の分析を進めている。その成果の一部を平成30年1月の筑波大学体育・スポーツ史研究会において発表した(前述)。
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今後の研究の推進方策 |
1.資料の選定と収集 「東ドイツにおいて政権政党であったSED、国家的機関、大衆団体であるスポーツ統括団体などによって出されたスポーツに関係する諸規定に示されるスポーツ振興の理念や方策が、どの程度まで実現されたのか、それがどのように変容したのかを、東ドイツが建国した1949年から1970年までの時期を中心に、ドイツ連邦公文書館所蔵資料を手掛かりに明らかにし、その背景を検討する」という本研究の課題を解決できる資料を収集したいが、DR5文書だけでもすべてを収集することは予算的に量的に不可能であるので、平成30年度においても、第一に、DR5文書の、東ドイツの主なスポーツ関係規定に直接関連する資料を収集し、第二に、目録シートの①国家委員会及び内閣官房の指導と組織、②計画と報告の資料を主に収集したい。 2.分析枠組みの構築と海外研究協力者との協力 平成30年度においても、分析枠組みの構築に役立てるために、今まで見落としている可能性のある東ドイツスポーツ史、東ドイツスポーツ政策に関係する先行研究や参考文献をできる限り網羅的に収集したい。また、本研究が外国のスポーツを政策史的に研究するものであることから、海外研究協力者と情報を交換しながら研究の質を高めていきたい。 3.資料の分析と学会発表 平成30年度以降には収集した資料の分析を中心としたい。そして、平成30年度末にはその時点における研究成果を発表したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
4000近いファイルの中から、必要な資料を精査するのに時間がかかった。またその一つひとつの資料の量が日本からではわからないために、差額が生じた。次年度は収集した資料の分析および研究成果の発表が主となるが、なお必要と思われるDR5文書については収集したいと考えている。
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