本研究の目的は、水、雪粒子、空気の誘電率の違いを利用し、スキーなどの滑走体と雪面が接触する場合の真実接触面積を櫛型電極により評価する新しい方法を提案すること、雪面の真実接触面積と摩擦力の関係、摩擦熱による融解水の影響について調べることである。 研究実施計画として、(1)偏光顕微鏡による真実接触面観察装置、櫛型電極による誘電特性測定システム、直線滑走による摩擦試験装置の開発、(2)真実接触面積評価方法の構築、(3)連続摺動装置の開発を行い、本年度は(4)櫛型電極を内蔵した滑走体による動摩擦実験、(5)まとめを行うことであった。本年度においても、概ね予定通りに研究は進んだが、滑走体に内蔵した櫛型電極とLCRメータを接続する配線の位置が変わると、誘電特性が大きく影響を受けるという問題が生じたため、雪面を回転し、滑走体を固定する連続摺動実験を重点的に行った。 得られた結果を整理したところ、本研究の範囲では、真実接触面積は時間経過とともにほぼ対数関数的に増加すること、真実接触面積は大きくても接触面の概ね0.1%程度であること、粒子径が小さく、雪温が高く、接触圧が大きいほど真実接触面積が大きくなることを示した。また、櫛型電極で測定した比誘電率と真実接触面積の関係には、雪粒子径の影響は小さく、温度ごとに相間があることを示した。以上の結果から、誘電特性から真実接触面積を推定する方法を構築した。静摩擦係数と真実接触面積の関係についてもまとめ、ほぼ直線関係になることを示した。さらに、連続摺動装置により、印加電圧の周波数を2種類に変えた誘電特性評価を行ったところ、本研究の範囲では融解水の発生時に動摩擦係数が大きくなることを示した。多くの研究で雪氷の低摩擦は融解水の発生によるとされているが、本研究では逆の場合があるという興味深い結果が得られたことになる。
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