2020年度は,第一に,スポーツ事故の具体的な分析として,運動部活動の競技種目別における熱中症事故について分析し,第二に,新型コロナウイルスの感染拡大にともなう部活動におけるクラスターの発生状況について調査した。 第一の課題では,日本スポーツ振興センターが毎年刊行している『学校の管理下の災害』の公開データをもとに,過去の状況を調べた。『学校の管理下の災害』には,2010年度以降において,各種負傷や疾病に関して,活動内容別の件数が計上されている。中学校と高校の運動部活動では,毎年計3000件ほどの熱中症事例が報告されている。記録的な猛暑となった2018年は計4000件にのぼる。2016~2018年度の過去3年分について詳細な分析をおこなったところ,学校管理下の熱中症事案について,中学校では68.1%が,高校では63.9%が運動部活動で起きていること,部員1万人あたりの発生率では中学校と高校いずれにおいても,発生率の最多はソフトボール部で,2番目が野球部,3番目がラグビー部であることがわかった。さらに筆者が別途実施した中学校運動部活動の実態調査の結果を接合させたところ,活動時間数が大きい競技種目ほど,熱中症の発生率が高いことが明らかとなった。 第二の課題では,新型コロナウイルスの感染拡大にともなう,部活動における「クラスター」の発生状況を,新聞記事データベースを用いて集計・分析した。2020年10月から2021年3月までに中学校と高校の教育活動で156件のクラスターが確認できた。新聞記事では,学校名をはじめ具体的な活動状況までは記載がないものが多かったもののそうした「不明」ケースをのぞくと,高校では圧倒的に部活動でクラスターが発生していることが明らかとなった。
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