研究課題/領域番号 |
16K01662
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
川本 真浩 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (20314338)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スポーツ史 / ナショナリズム / 帝国史 / 地域主義 / 国際関係 |
研究実績の概要 |
1年間を通して、近現代イギリス史・帝国=コモンウェルス史、近代スポーツ史、オーストラリア史、ニュージーランド史、カナダ史などに関わる研究文献を渉猟し、考察に活用できる形を整えた。国内で利用できる一次史料であるオーストラリアならびにニュージーランドの新聞記事データベースを活用して基本情報の収集と新聞資料の活用に関する準備をおこなった。 11月下旬から12月上旬にかけてニュージーランドで史資料調査を実施した。訪問先はウェリントン及びクライストチャーチである。ウェリントンでは、ニュージーランド国立図書館ウェリントン館(National Library of New Zealand, Wellington;以下、NLNZWと略記)、国立博物館、旧ドミニオン博物館などを訪ねて、19世紀半ばから20世紀半ばにかけてのニュージーランド史及びニュージーランドのナショナリズムに関わる史料と知見を得た。とくにNLNZWでは、ニュージーランドからのコモンウェルス・ゲームズないしオリンピックへの参加をめぐる国内諸団体の動きをつかむべく史資料の閲覧と収集をおこなった。クライストチャーチでは、カンタベリ博物館やカンタベリ大学などを訪ねて、カンタベリ地方への入植から1974年コモンウェルス・ゲームズ開催時ごろまでの同地方史にかかる知見を得た。 さらに、イギリス発祥のスポーツで歴史的にも地域社会に根差した娯楽のひとつでありながら、エンパイア・ゲームズ/コモンウェルス・ゲームズの実施競技でもある点で、地域と帝国=コモンウェルスを結びつけるスポーツ文化のひとつであるローンボウルズの来歴にかかる論稿を執筆した。平成28年度末の時点で、同論稿は次年度の早い時期に学会誌に投稿できる状況である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全般的な研究進捗状況について、当初の計画とさほど大きなズレはないものの、史料調査の部分に関して若干の遅れが生じている。 そのもっとも大きな理由は、訪問直前に発生した地震の影響でNLNZWでの史料調査を予定どおりに実施できなかったことである。また、所属機関における他の業務に割かれる時間が当初の想定よりもいささか多くなったこともある。 前者については文書館担当者と電子メールを交わすことで最新状況の把握に努めながら日程の変更も含めて時間の許す限りにおいてスケジュール等を検討したが、利用制限(一時閉館)が文書館そのものの被害よりも近隣建造物の状態によるものであったので訪問までに開館の可能性が見込めたこと、また後者の要因もあいまって日程を年度内で先送りすることが困難であったことにより、内容を一部変更して調査を実施した。 また、もっぱら後者の事情によって国内での調査も当初の計画どおりに進めることができなかったが、海外調査もあわせて、本研究全体の進行を大きく妨げるほどのものではなく、次年度以降にこの遅れを取り戻すことは可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は基本的には申請時の計画に従いつつ、前年度の遅れを取り戻すべく、本研究を進める。作業の中核となるのは海外での史資料調査である。8月下旬に7泊8日の日程でイギリスを訪問しカーディフ中央図書館(Cardiff Central Library)などの施設において第6回大会(1958年)に関係する史資料の渉猟と開催関係施設(跡地等を含む)の巡検をおこなう。なお、当初の計画において平成30年3月に実施する予定であったオーストラリアでの調査については、同年4月に同国クイーンズランド州ゴールドコーストにおいて第21回大会が開催されることに鑑み、限られた予算と時間のなかで作業効率を高めながら有用な大会関連資料を入手するためにも、同大会開催時期に重なる日程で調査を実施することも選択肢としながら事前準備を進める。あわせて、国内での資料調査は大阪及び神戸の大学図書館などを2泊3日で訪問して進める。 国内外で渉猟した史資料については、順次とりまとめの作業に着手し、分析・考察を進める。平成29年度の終わり頃または平成30年度の前半には学会誌ないし研究紀要への投稿あるいは研究会ないし学会での研究報告などの形で、その成果を中間報告的に公にする。平成30年度も引き続き平成29年度までの遺漏を補足する作業を進めながら、年度後半には研究全体のとりまとめに専念する。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの進捗状況」欄に記したとおり、ニュージーランドでの史資料調査および国内での資料調査が予定どおりの内容でおこなえなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に実施予定のイギリスにおける史資料調査の日程を当初の予定よりも長くとることで、現地で渉猟する史料の質と量を高めることを見込む。研究課題のなかでのイギリスにかかる局面の分析と考察を拡充すると同時に、ニュージーランドをも視野に入れた論点をあぶりだす。また、同様にオーストラリアでの調査を拡充させる形でニュージーランドでの調査を補完することを目指す。もっとも、研究を遂行する過程でイギリスならびにオーストラリアの調査で補完しきれない部分が明らかになった場合は、ニュージーランド再訪も視野に入れて計画を再度練り直す。国内での調査についても、平成28年度に実施できなかった資料調査を平成29年度に再計画し実施する。
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