研究課題/領域番号 |
16K01667
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
竹内 京子 東京医科大学, 医学部, 客員研究員 (20531388)
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研究分担者 |
松村 秋芳 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 進学課程, 准教授 (50531373)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 股関節回旋 / 回旋角度 / 測定評価 / 重心動揺 / 姿勢制御 / 運動能評価 / 一側優位性 / 荷重動揺軌跡 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、立位股関節回旋角度測定法及び荷重動揺軌跡測定法(挑戦的萌芽研究24650397)を運動現場や生活行動現場での標準的な測定法として世に広めること、これにより運動種目や体力レベル、生活環境などが異なる人々の動きの特性をより正確に評価するための、汎用性のある運動技能評価プログラムの作成をゴールとしている。 この測定法は、立位膝伸展姿勢で立ち、両足下に設置した2台の回旋円盤を、対象者が自動(能動)で、両足を左右同時に内外旋運動(回旋運動)を10~15回行い、この時に得られる、回旋角度変化と荷重心(圧力中心)位置の変化データから、人の動きの特性を評価しようとするものである。様々な年齢(幼児~高齢者)や運動経験(日常生活行動~競技アスリート)者を対象に、姿勢制御力に影響を及ぼす外的要因(上肢位、下肢開脚幅、視覚情報、動作速度、貼付・装着物など)および内的要因(年齢、性、利き手・足、運動歴・レベル、運動傷害歴等)が回旋角度・荷重心動揺軌跡にどのように反映されるかを検討し、運動技能評価プログラムの基礎データとしている。 平成29年度は、主に動作の精度、荷重動揺軌跡のタイプ分類、2台の円盤にかかる荷重配分の左右差と左右脚の機能分化との関わりを検討した。動作中、安定感を得ている場合は、年齢や運動歴に関わらず、利き足(ボールを蹴る側)への体重の配分が優位であったが、不安定性を高める外乱要因(速度、光条件など)が変化すると非利き足側に荷重心が移動してくる傾向が示され、学問的に意義ある結果が得られた。 目線測定や3次元動作解析における頭部への測定用プローブ装着は対象者によっては回旋動作への大きな外乱刺激となったため、運動技能評価検査項目としては不適であることが示唆され、実験研究計画の練り直しが行われた。 論文は、2編(分担者)学会発表は15演題(筆頭7)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の第一目的であるところの立位股関節回旋角度測定法及び荷重動揺軌跡測定法を運動現場や生活行動現場での標準的な測定法として世に広めることが順調に進んでおり、測定法のPR活動に関しては成功しつつある。定期測定希望者(射撃・ウエイトリフティング・アーチェリー・サッカー等のアスリート、視覚障害者アスリート、高齢者・小学生等)が急増したことは、多彩なデータを得るためには益が多かったが、その反面、収集されたデータ整理に費やす時間を増やすことが困難となり、データ解析補助員への業務委託量を平成28年度以上のペースで増やすことがかなわず、未解析のデータが存在している。このため、平成29年度の業績のうち、論文は分担者のみの業績となり、論文関係の費用が繰り越されることとなった。また、評価プログラム作成に必要な研究計画の一部に変更が生じたため、機材レンタル費用や計算センターに委託する予定の費用が発生しなかったことなどにより、予算の支出が遅れ気味となった。依って、研究活動自体は順調に進展しているが、費用の支出が遅れていることにより、おおむね順調に進展している、との自己評価を行った。 研究計画の一部変更理由は、目線測定や3次元動作解析における頭部への測定用プローブ装着は一般人や子どもを対象とする場合、回旋動作への大きな外乱刺激となることが予測され、運動技能評価のための検査項目としては不適であることが示唆されたためであり、これに代わる実験計画として、回旋盤面に足圧シートセンサーを装着したり、歩行時の足底部の荷重分布圧変化を検討することで、より質の高い運動技能評価法を採用することとなったためである。
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今後の研究の推進方策 |
データ収集および生データの解析方法は、平成30年度も平成28年度および29年度と同じ方法で進めていく予定である。これに、足圧シートセンサーから得られるデータを加えて、回旋動作中の姿勢制御力を詳しく解析し、対象者の運動技能がより正確に評価できるようにプログラム作成に務める。 足圧シートセンサーは、回旋盤面に取り付け可能な小型タイプ(15㎝×30㎝)と、単体で用いる中型タイプ(48㎝×48㎝)タイプを使用してデータ収集を行う予定である。 回旋盤面上の小型シートは、回旋運動時に得られる他の諸データと同期されている。足圧シートセンサーの上での歩行や走行、ジャンプ等の着地時の様子は、2次元映像の記録と同期する。 立位股関節回旋角度測定および荷重動揺(足圧中心)軌跡測定法と足圧シートセンサーは、ともに対象者の身体には何も装着しないので、対象者の行動に特別な影響を与えることがない。2次元映像と組み合わせることで、今まで以上に詳しい解析ができる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由 旅費は、地方での学会発表が一回増えたため、支出が予算を越えていたが、人件費・謝金が、収集データ数増加のため、結果的に研究者が研究補助員に委託する前に行うデータ整理が遅れ、研究補助員へ委託する費用が、平成28年度余剰分が加わった平成29年度予算に達しなかった。また、研究計画変更のため、機材レンタル費用や計算センターへの委託費用が発生しなかったことなどから、平成28年度の未使用分がそのまま、29年度に引き継がれた形となった。これが次年度使用額が生じた理由である。 平成30年度の総予算は約180万円弱となる見込みである。分担研究者の松村秋芳の未使用分約20万円弱に加え、連携研究者の菊原伸郎を分担研究者に変更し、10万円を配分する。物品購入では、研究計画の変更に伴い、当初計画の機材レンタルは行わず、その費用で足圧シートセンサーを左右脚分2枚購入する予定である(税込み計40万円程度)。研究補助員の人件費・謝金を75万円とし、英語論文校正費用15万円、学会等の旅費を15万円、事務消耗品費用を5万円計上する予定である。
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