研究課題/領域番号 |
16K01673
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大津 克哉 東海大学, 体育学部, 准教授 (70598094)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スポーツと環境 / オリンピック競技大会 / オリンピック教育 / 文化プログラム / 環境啓発活動 / 持続可能性 / 気候変動 / カーボンオフセット |
研究実績の概要 |
現在のIOCの動向では「環境」について、環境を含むより大きな概念として「持続可能性」をとらえ、オリンピックにおける持続可能性の重視を明確化している。それ以降オリンピック競技大会の開催に伴うコスト面や地球環境に対する影響についての検討がなされ、大会の規模やコストを削減し運営の簡素化を図ることを提言している。しかし、環境保全は終わりのない活動と言われるほど継続力の必要な活動ゆえに、その成果がどこまで実を結んでいるのかという点については依然捗々しい成果が得られているとは言えない。 そこで、環境啓発活動の実際として2016年8月に開催されたリオデジャネイロ夏季オリンピック大会の調査に引き続き、2017年度は2018年2月に韓国・平昌で開催されたオリンピック冬季大会の視察を行った。リオ大会の開会式プログラムでは地球環境問題が扱われた。一方、平昌の開会式は終始、南北融和を演出したものだった。例えば、北朝鮮選手団の参加やイマジンの演奏、平和の象徴である鳩を放つ演出など、さらには大会組織委員会会長とIOCバッハ会長のスピーチにもそれがアピールされていた。加えて、開会式プログラムの終盤には聖火台への点灯の場面で女子アイスホッケー南北合同チームの2人の選手による聖火リレーにも窺えるように「平和」への希求に向けたメッセージ性が極めて強いものであった。 大会会場内での環境PRについては、気候変動に対する対応としてオリンピックパークに特設パビリオンが設営されていた。そこではオリンピックの準備と運営から排出される二酸化炭素を相殺する取り組みの一環としてファンドレイジングキャンペーンが実施された。このファンドレイジングイベントで集まった全ての収益は、オリンピックに関連した二酸化炭素排出を相殺するために、国際的に取り引きされた認証排出削減量(CERs)の購入に使われることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)5月:国際オリンピック・アカデミー(IOA)主催の国際セッション(ギリシャ・オリンピア)に参加し、Tokyo2020大会組織委員会が掲げる環境対策について報告を行なった。(2)5月:日本オリンピック・アカデミー(JOA)主催の「JOAセミナー(東京)」において5月に参加した理事者セッションの参加報告ならびに研修で発表した内容について総括した。(3)7月:JOA主催の「15周年記念JOA特別コロキウム(東京)」のパネリストをつとめた。 IOCの環境に対する取り組みの動向を紹介した。(4)8月:学校法人東海大学望星学塾・NPO法人柔道教育ソリダリティー主催の「第5回望星スポーツジャンボリー(神奈川)」においてオリンピズムについての講義を行った。(5)11月:首都大学東京主催の「2017年度 オリンピック・パラリンピック伝道講座Ⅱ(東京)」の講師を務めた。「環境プログラム:どのような課題が?」をテーマに発表を行った。(6)11月:キューバオリンピック委員会(キューバ・ハバナ)ならびに国立ウクライナ体育・スポーツ大学(ウクライナ・キエフ)から招聘を受け、16年リオ大会の環境への取り組みの総括、ならびに18年平昌大会、20年東京大会における環境啓発活動について情報提供をした。(7)12月:日本オリンピック委員会(JOC)主催の「2017年度 JOCオリンピアン研修会(大阪)」で講師を務めた。オリンピアンに向けて「オリンピアンの果たす役割とは?」をテーマにオリンピズムの意義についてレクチャーを行った。(8)1月:公益財団法人日本野球連盟が主催する指導者講習会(東京)にて「スポーツと環境 スポーツの心、環境と未来へ」というテーマでJOCが推進する環境活動について報告を行った。
以上のように、2017年度は研究についてのアウトリーチが順調に進んでいるため、「順調な進展」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度は、10月にアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催される「第3回夏季ユースオリンピック大会」の情報収集調査が含まれる。オリンピズムの根本原則、規則、付属細則を成文化した『オリンピック憲章』の中にある環境に関する項目では、「環境問題に対し責任ある関心を持つことを奨励し支援する。またスポーツにおける持続可能な発展を奨励する。そのような観点でオリンピック競技大会が開催されることを要請する。」と示されているように持続可能性に対する責任が明確化されている。特にオリンピックのようなメガイベントは、影響を及ぼす範囲も広範囲、また長期間にも渡る。YOG開催も通常のオリンピックと同様に、イベント開催によるマイナス影響を出来るだけ少なくし、プラス効果を最大化していくことはオリンピックを取り巻く環境の面から見ても考えていかなければならない問題であることは必至だ。なかでも文化・教育プログラムの様子は、オリンピック大会のホスト国としてオリンピズムの振興を促進するうえで、検証することが重要となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年2月の平昌冬季オリンピック競技大会視察に関する残金が発生した。この残金は2018年10月に開催される「第3回夏季ユースオリンピック大会(ブエノスアイレス)」の情報収集調査の旅費に充当する予定である。
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