本年度は日頃から専門的にトレーニングを行っている成人男性7名を対象として、自己筋膜リリース(SMR)が動脈スティフネスを低下し、左心室拡張機能および有酸素性運動パフォーマンスを向上させるかどうかについて検討した。被験者は実験室入室後20分間の安静を取り、血圧脈波検査装置を用いて頸動脈-大腿動脈間脈波伝播速度(cfPWV)および超音波画像診断装置を用いて1回拍出量および左心室拡張機能を測定した。安静時の測定後、SMR試行として30分間の全身のSMRを実施し、SMR開始前、終了0分後および30分後に上記の測定を実施した。測定後、有酸素性パフォーマンステストとして最高酸素摂取量(自転車エルゴメータによる漸増負荷テスト)を測定した。また、SMRを行わないコントロール(CON)試行として30分間の安静を取り、SMR試行と同様の測定を行った。なお、SMR試行とCON試行は1週間以上の間隔を空け実施の順序が異なるよう無作為に実施した。SMR試行のcfPWVはSMR前と比較してSMR終了0分後は変化が認められなかったものの、SMR終了30分後は大きく低下した。対照的に、CON試行のcfPWVはいずれの時点においても変化が認められなかった。また、SMR試行の1回拍出量および左心室拡張機能はSMR前と比較してSMR終了0分後は変化が認められなかったものの、SMR終了30分後は大きく増加した。対照的に、CON試行の1回拍出量および左心室拡張機はいずれの時点においても変化が認められなかった。SMR試行の最高酸素摂取量はCON試行と比較して高い値を示した。これらの結果から、SMRによる動脈機能と左心室拡張機能は有酸素性運動パフォーマンスに影響を及ぼす可能性が示唆された。
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