研究課題/領域番号 |
16K01686
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
田中 美吏 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 講師 (70548445)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心理的プレッシャー / 力動的知覚 / あがり / 空間知覚 / 知覚と運動 |
研究実績の概要 |
心理的プレッシャー下における力動的知覚(知覚の歪み)とパフォーマンスの関係を調べる2つの実験に取り組んだ。 実験1では、陸上の走り高跳び選手を実験参加者とし、走り高跳びの助走の開始直前にバーの高さの知覚判断を行わせる実験に取り組んだ。6名に対して実験を行うことができ、過去に実施した8名と合わせてサンプル数を14名まで増やすことができた。結果として、走り高跳び課題の成否に対して報酬や罰、ペアプレッシャーが与えられるプレッシャー条件では非プレッシャー条件に比べて、バーの高さを高く知覚することが明らかとなった。また、非プレッシャー条件からプレッシャー条件にかけての主観的な緊張度の増加が大きい実験参加者ほど、バーを高く知覚することも示された。課題の成否に非プレッシャー条件とプレッシャー条件の差は見られず、知覚の歪みがパフォーマンスにまでは影響しなかったと言える。 実験2では、ダーツ投げ課題を用いて、ダーツを投げる直前(事前判断)やダーツを投げてパフォーマンス結果を見た直後(事後判断)に、的の直径のサイズ知覚を調べる実験に取り組んだ。17名に対して実験を行い、現在のところ、課題パフォーマンスに対して報酬や他者評価の存在するプレッシャー条件では非プレッシャー条件に比べて事前判断と事後判断の両方において、的のサイズを小さく知覚する傾向が得られている。さらに、非プレッシャー条件からプレッシャー条件にかけて課題成績を落とした実験参加者ほど、事後判断において的のサイズをより小さく知覚することも示されている。 なお、これらの実験の計画や途中経過を第25回運動学習研究会(JMLS)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度の研究計画は、本研究の推進に対して必要な実験装置を納入し、実験環境の整備を図り、実験装置の測定技能を習得するとともに、実験1に取り組むことを目標していた。ワイヤレスにて心電図や筋電図を測定するための装置を納入し、測定技能の習得を図った。さらに、実験1を終了させるとともに、次年度に実施を予定していた実験2に関しても70%ほど進捗させることに成功した。 6月と3月には、連携研究者とのミーティングも行い、本研究の計画や進捗状況の報告とともに、今後の方向性に対する議論も行った。3月のミーティングでは、本研究のテーマに精通したゲスト講師(兄井彰先生(福岡教育大))を招き、知覚と運動に関する基礎理論や関連研究のレクチャーを受けるとともに、本研究に対する意見を様々な角度からいただいた。6月には鹿屋体育大学体育・スポーツ心理学研究室を訪問し、本研究の計画をプレゼンテーションしたうえで、研究計画についての多くの有益な提案をいただいた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、実験2の続きを行うとともに、実験2と同様にダーツ投げ課題を用いた実験3の計画と実施を行っていく。実験3では、心電図や筋電図、さらには課題遂行時の緊張度、努力度、自信を調べるための心理検査を用いて、心理的プレッシャー下における知覚と運動の間に介在する心理的および生理的機序を調べることまで踏み込む。 また実験1を7月に行われる第14回国際スポーツ心理学会大会(International Society of Sport Psychology 14th World Congress)にてポスター発表するとともに、スポーツ心理学分野の国際誌に資料論文として提出する。第2実験の結果も、国内の学会において発表を予定している。研究の進捗状況を報告するための連携研究者とのミーティングも年間で2回の開催を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費(国際学会や連携研究者とのミーティングのため)を平成29年度に実施するように計画変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会参加(ISSP(Internationa Society of Sport Psychology) 14th World Congress Sevilla 2017)のための旅費、スポーツ心理学分野や運動の制御・学習分野の本研究関連書籍の購入等に有益に充当する。
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備考 |
研究室ホームページ内で研究内容の紹介や研究成果の報告を行っています。
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