研究課題/領域番号 |
16K01686
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
田中 美吏 武庫川女子大学, 健康・スポーツ科学部, 准教授 (70548445)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 心理的プレッシャー / クラッチ / チョーキング / 力動的知覚 / 空間知覚 / 知覚の機能的役割 / 行為特定性知覚 / 心拍変動 |
研究実績の概要 |
昨年度(29年度)より取り組んでいるダーツ課題を用いて、的のサイズ知覚についてプレッシャー下での力動的知覚の生起の有無を調べることと、プレッシャー下でのサイズ知覚とパフォーマンスの関係を調べることを目的とした第3実験に継続的に取り組んだ。昨年度は7名を対象に実験を行ったが、今年度(30年度)はさらに21名を対象に実験を行い、サンプリング数が28名にまで達した。主な結果として、①全実験参加者の平均において非プレッシャー条件とプレッシャー条件の的のサイズ知覚に有意な差はない、②非プレッシャー条件では的を大きく知覚した試行では課題成績が良く、的を小さく知覚した試行では課題成績が悪いが、プレッシャー下では的を小さく知覚することで課題成績が向上する、などの結果が得られた。このことは適度なプレッシャー下で課題難度を高く感じる方向への知覚の変化は課題成績に正の影響を与えることを意味しており、パフォーマンスに対して合目的的な知覚の変化(知覚の機能的役割)がプレッシャー下で生じるという新奇な知見を示すものであった。プレッシャー下でのストレス反応の生理指標として心電図を記録し、心拍数や心拍変動(HRV)を分析し評価する技術も向上した。 また、28年度に実施した第1実験を国際誌(Journal of Functional Morphology and Kinesiology)に短報として投稿し、査読を経て採択され公開に至った。さらに、28年度から29年度にかけて実施した第2実験を北米スポーツ心理・身体活動学会(North American Society for the Psychology of Sport and Physical Activity)にてポスター発表し、査読を経て採択が決まっていた国内誌(体育学研究)に研究資料として公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該課題に対して4年間で5つの実験に取り組むことを申請段階での研究計画としていた。3年間に渡って3つの実験に取り組むことができており、実験に関しては順調な進捗と自己評価している。第1実験と第2実験に関してはスポーツ心理学分野の国内外の学会で発表を行うことも終え、論文としての掲載も終えた。ポスターや口頭発表時の他研究者とのディスカッションや、査読過程における査読者からの有益なコメントを基に、研究全般や各実験の問題点・改善点について把握することもできた。これらの点から研究成果の公表という点でも順調な進捗ができている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は第3実験の残りを継続的に行うとともに、第4・5実験の準備・実施も行っていく。第4実験からは第1から第3実験で行ってきたプレッシャー下での知覚とパフォーマンスをテーマとした研究を継続し、成果を出していくことに限界が見えたため、実験の独立変数をプレッシャーからセルフトークに変え、運動課題を行う際の思考(認知)が知覚とパフォーマンスにどのように影響するかについて検討する実験に変更していく計画を立てている。また、実験3を7月に行われるヨーロッパスポーツ心理学会(European Federtion of Sport Psychology)congressにてポスター発表を行う。最終年度のため、4年間の当該研究の成果報告をするための連携研究者とのミーティングも2~3月にかけて開催する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗状況を報告し、議論するための連携研究者との年次ミーティングを開催できずにその旅費や謝金を使用しなかったために次年度使用額が生じた。今年度に開催予定の連携研究者との年次ミーティングにおける旅費や謝金に充当する。また、スポーツ心理学分野や運動の制御・学習分野の本研究関連書籍の購入にも有益に充当する。
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備考 |
研究室ホームページ内で研究内容の紹介や研究成果の報告を行っています。
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