思春期後期にある男子生徒を対象としたプライオメトリックトレーニングの実践は,疾走能力の改善に効果がある一方,縄跳びの様な短時間で反動的に踏み切る力 (以下,リバウンド型ジャンプ力) の低い生徒には効果が小さい.本研究では,この問題を解決するにあたり,リバウンド型ジャンプ力を高める方法を考案し,疾走能力の改善につながるのか検討することにした. リバウンド型ジャンプ力を高める条件の一つには,着地予測に基づいた筋の予備緊張や着地直前の適度な下肢関節の屈曲による踏切の先取りが重要となる.そこで,踏切の先取りを理解・習得させる方法として,縦60cm×横60cm×高5cmの踏切板に跳び乗って即座に踏み切らせる運動を考案した.この運動では,平地におけるリバウンド型ジャンプに比較して,着地直前における膝関節の屈曲が大きくなり,踏切前半の足関節の屈曲が小さくなることが観察された.さらに,この踏切板を90cm間隔で10枚設置し,連続して踏み切らせる運動を5セット反復させると,運動前後でリバウンド型ジャンプの踏切時間が短縮する一過性の効果が認められた.一方,この運動を週2回の頻度で6週間継続すると,2週目までは踏切時間の短縮や跳躍高の増加が見られるものの,それ以降の改善は認められなかった. これまでの研究成果から,研究最終年度では踏切板を用いたリバウンド型ジャンプ運動が短距離走パフォーマンスに与える一過性の効果を有するのかに焦点を絞り検討した.その結果,50m走における平均記録,スタートから30m地点における接地時間,ストライド長およびピッチに有意な変化を認めることはできなかった.結論として,本研究で考案した運動はリバウンド型ジャンプ力を改善する一過性または短期間の効果を有するが,短距離走パフォーマンスへの転移は認められないことが確認された.
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