研究課題/領域番号 |
16K01691
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
越山 賢一 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40153530)
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研究分担者 |
安部 久貴 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (40634556)
田村 達也 青山学院大学, 教育人間科学部, 助教 (10759913)
奥田 知靖 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (90531806) [辞退]
前鼻 啓史 順天堂大学, スポーツ健康科学研究科, 博士研究員 (00803636)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポジショニング / 移動距離 / 移動スピード / スペーシング |
研究実績の概要 |
2年目にあたる平成29年度は公式戦を含む20試合以上の試合においてデータを収集した。その中には競技力に差のあるチーム同士の試合、チーム内の競技者のレベル差などあり多様なデータを得ることができた。 サッカーやラグビーに代表されるオープンスキルが求められるスポーツにおいて、どのような意図を持って動いたか、という内面的思考は選手の移動スピードや方向と、実際の行動範囲や相手やボールの動きを映像とミキシングしながら推測できた。 移動距離について見ると競技力の低い群(非レギュラー群)が競技力の高い群(レギュラー群)よりもその距離は長く、特にFWに関しては有意に長いことが明らかになった。しかし、 Di. Salvo(2009)は有酸素的持久力が、必ずしも試合中のフィジカルパフォーマンスに反することをないと述べているように、Yo-Yo Intermittent recovery-Test Levl2においてはレギュラー群のほうが良い結果を示している。この矛盾を、走スピードでスプリントと定義した24km/hで比較すると、競技力の高いほうがその本数が多いことが明らかに多いことが分かった。試合内容に影響を受けているが、スペースを見つける力、タイミングを図る力などの戦術理解、俊敏な動きを導く速やかな判断力などの戦術理解度や経験値の差が競技力に影響していることが推測された。 以上のことから、戦術行動の評価には選手の意図する内容が推し量れる移動範囲、移動距離や移動スピードが活用され得ることが分かった。いわゆる選手のスペーシング能力が競技力と戦術行動に密接な関係を持つことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
公式戦でのGPSの着用を(公財)日本サッカー協会が認可してから研究の幅が大きく広がった。本実験では北海道に限定されているが様々なレベルの試合や競技能力の異なる選手のデータを得ることができた。チームの競技力は移動距離の差、いわゆる選手が良く動く、では推し量れないことが明らかになった。同時に選手個人の競技能力もフィジカル能力だけでは説明できず、選手の内面的活動に踏み込み分析することが重要であることを改めて確認できた。スペーシングといったフィールド全体を俯瞰する力、最適のタイミングを逃さない判断力の違いがパフォーマンスに影響を与えることが明らかになった事で、競技力の差は戦術的行動、つまりスペースの活用とその判断であることが明らかになってきた。現在は研究分担者の専門性を活かしデータの分析と解析、さらにそこから選手の意図を読み取る作業に入っている。まだ、整理はされていないが、GPSから得られたデータと映像をミキシングし選手への戦術行動の意図を明確にできる具体的な指標の作成に取り掛かっている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の平成30年はこれまでのデータにさらにデータを積み重ね、サッカーの戦術指導法の構築が課題となる。GPSから得られたデータから戦術行動と説明できる行為を客観的に意味づけるために対象となるプレーをデータと映像から取りまとめ、最終的にその結果をどのようにコーチングするかという点を明らかにすることが目標となる。これまでの映像を用いた戦術指導は高度な内容であり、水準の高い指導者が分析を加えるものが多い。そして選手が分析結果をどの程度理解できたかはその次のプレーを待たなければならなかった。 分析内容を知識として止まらずに理解させるためにどのようなコーチングが適切なのか、という点が指導現場から求められている。戦術指導のコーチングの方策の一つにミーテングの活用があげられる。平易で理解しやすく、再現性のある具体的な内容を伝達するための方法の構築も求められている。 そこで最終年度ではデータの取集・分析から客観的資料として個人やチームに還元する方策として、戦術行動をどのような視点や意味づけを持ってミーテングの中で落とし込むかという戦術指導の方法論も検討したいを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に関しては学会時、メール等で打ち合わせを済ませることができたため未使用。物品費に関しては印刷費、コピー代などに使用。平成30年度は映像ソフトの購入を予定。
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