研究課題/領域番号 |
16K01694
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金谷 麻理子 筑波大学, 体育系, 准教授 (00284927)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動観察能力 / 見抜く力 / コーチ |
研究実績の概要 |
平成29年度は、前年度の結果を踏まえて、以下の課題に取り組んだ。 ・各スポーツ種目における“職人”コーチに対する調査 実地調査によって選定した考察対象者に対して“職人コーチ”に関する調査を行った。 事前に、考察対象者における現在の立場に至るまでの競技歴および指導歴を各スポーツ種目の専門家を通じて、ライフヒストリーに関する情報を収集した。同時に、実際のトレーニング場面において指導している場面を観察し、ライフヒストリーと観察結果に基づいて、選手とのやり取りの根拠や意図、技術の伝達方法、また現在の指導法へと至った経緯などについて聞き取り調査を行った。また、ここでの調査結果については、今後設問と回答について筆者と考察対象者で数回のやり取りを行い、考察対象者の意図や考えができるだけ厳密に表現できるようにした。 その結果、実際のトレーニング場面における観察および聞き取り調査から、選手の能力をうまく引き出すことができるコーチは、総じてその指導が単なる練習メニューの作成や技術的な欠点の指摘にとどまらず、各選手の日々刻刻と変化する心身のコンディションを把握すると同時に、モチベーションをより高め、効果的な練習が実践できるような環境づくりにも注力し、個々の選手に応じた方法で指導を行っていることが明らかになった。すなわち、運動を「見抜く」ためには、その都度の動きの外形的な経過のみならず、そのような動き方となった背景(技術の習得プロセスやその都度の動きの目標像、その日の選手のコンディション等)を把握する必要があり、それもまた意図的な観察によって得られるものであるため、これもまたある種の運動観察能力といえると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、以下の課題を実施した。 ・各スポーツ種目における“職人コーチ”に対する調査 調査の結果、選手の能力をうまく引き出すことができるコーチは、総じて単なる練習メニューの作成や選手の技術的な欠点の指摘にとどまらず、各選手における心身のコンディションの把握やよりモチベーションを高め、効果的な練習が実施できる環境づくりを個々の選手に応じた方法で行っているということが明らかになった。一方、各考察対象者におけるライフヒストリーとの関係を検討するには至っていないため、この点については来年度に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、これまでの調査・分析結果を踏まえて、運動を「見抜く」ために必要な経験と知識、そして能力についてより詳細に検討し、選手の技能向上に大きく貢献することができる“職人コーチ”が有する運動観察能力(運動を「見抜く力」)の構造とその能力の獲得プロセスについてまとめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に本研究課題に取り組む中で、同時に研究成果のまとめ方や公表方法について再検討を行った。その結果、平成30年度には国内外における研究職にある指導者のみならず、現場のコーチやこれからスポーツ指導に携わる若手コーチへの情報提供を行いたいと考え、その資料作りの人件費ならびに情報発信のための旅費、外国語への翻訳のための予算を次年度に繰り越すことにした。
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