研究課題/領域番号 |
16K01695
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
會田 宏 筑波大学, 体育系, 教授 (90241801)
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研究分担者 |
藤本 元 筑波大学, 体育系, 助教 (30454862)
NEMES ROLAND 筑波大学, 体育系, 助教 (50718997)
山田 永子 筑波大学, 体育系, 助教 (80611110)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 球技 / 戦術指導 / 質的研究 / アクティヴ・インタビュー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,(1)球技において,国内外の卓越したコーチの持つ戦術指導に関する実践知(戦術指導力)を語りとして収集すること,(2)収集した語りの内容を質的に分析し,戦術指導に関する実践知の構造とその獲得過程について明らかにすること,(3)我が国のコーチ育成に寄与できる知見を実践現場に提供することの3つである。 平成29年度(研究2年度目)は,前年度に国内外の研究者で共同開発したアクティヴ・インタビュー法を用いて,球技において卓越したコーチの持つ戦術指導に関する実践知を語りとして収集した。種目別に見た対象者の内訳は,ハンドボール6名,テニス7名,バレーボール2名,サッカー2名であった。これにより前年度と合わせ,球技における国内外の卓越したコーチ18名(国外4名,国内14名)を対象とした調査が完了した。 この18名のうち10名の語りを質的に分析した。分析では,以下の3つの手順を踏んだ。(1)インタビュー調査における全ての発言内容からトランスクリプト(逐語録)を作成する,(2)国外で行った調査に関しては,それを日本語に翻訳する,(3)それぞれのトランスクリプトを精読し,戦術指導に関する発言に着目して調査対象者ごとに語りの内容としてまとめる,(4)語りの内容を考察し,戦術指導に関する実践知を個別事例として解釈する。 分析が完了した調査に関しては,日本体育学会,日本テニス学会,日本コーチング学会において口頭発表するとともに,原著論文として学術雑誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の主要な目標は,球技における国内外の卓越したコーチ(当初計画時12名)の持つ戦術指導に関する実践知とその獲得過程について,アクティヴ・インタビュー法を用いて共同的に語りを産み出すことであった。これらの目標は,ほぼ達成でき,おおむね当初の計画通りに研究を進められていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成30年度は,戦術指導に関する実践知の解釈と構造化,研究成果の発表を主要な目標とする。 ただし,国外の卓越したコーチを対象としたインタビュー調査では,対象者との日程がうまく調整できず,当初計画した人数を下回ったため,平成30年度のできるだけ早い時期に,ヨーロッパハンドボール連盟(EHF)がトップコーチと認定しているEHFマスターコーチ(2~3名予定)を対象に調査を行い,確かな言説を根拠に本研究の目的を果たせるようにする。 追加されたインタビュー調査結果と,調査を終えた18名のうち分析が完了していない8名のインタビュー調査結果に関しては,これまでと同様の分析手続きを用いて,戦術指導に関する実践知を個別事例として解釈する。その後,全ての個別事例について,共通点および相違点に着目して検討し,球技のコーチが目指すべき戦術指導力を構造化する。また,コーチが熟達化の段階を高めていくために獲得すべき能力について明らかにする。 学術的意味を持つ研究成果に関しては,日本体育学会,日本コーチング学会などで口頭発表し,原著論文として学術雑誌に投稿する。実践現場に提供できる研究成果に関しては,日本ハンドボール協会指導委員会などと協働し,我が国のコーチ育成に寄与できる情報としてまとめ,ウェブサイトなどで公開する。これらを通して,他の研究者や実践現場の指導者と戦術指導力に関して意見交換できる環境を整える。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度に予定していた,国外の卓越したコーチを対象としたインタビュー調査では,対象者との日程がうまく調整できなかった。そのため,それに係る旅費,謝金,テープ起こし等の経費が不要となった。これが,次年度使用額が生じた理由である。平成30年度のできるだけ早い時期に,ヨーロッパにおいて卓越したコーチにインタビュー調査を行い,経費を支出する予定である。
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