本研究の最終年度では、英国のマンチェスター市およびリバプール市において現地調査を行い、2012年ロンドンオリンピック開催と合わせて、脱工業都市としての戦略を模索していた両都市の中心部再生が計画され、今日でも継続されていることが確認できた。特にマンチェスター市では2002年に開催されたコモンウェルス大会のレガシーをさらに発展させる形で、オリンピック・レガシーが計画されていると考察した。合わせて、英国政府が長期的なビジョンを作成し、それに基づいて地方都市の空間戦略が構築されている状況も理解することができた。
最終年度では日本の地方都市として、広島市を事例に現地調査を行ったが、広島では2020年の開催を招致しようとしていたこともあり、2020年東京大会による直接的なレガシーよりもむしろ、招致活動を通した間接的なレガシーが大きく、後世に残っていくだろうとの結論を得た。また、同時に滋賀県に関しても2020年東京大会に関してのオリンピック・レガシーについての調査を行ったが、こちらは2024年に国体の開催を予定していることから、2020年オリンピックと2024年国体開催を合わせて、より大きなアーバンレガシーを構築しようとしていることが理解できた。
研究期間全体を通して、英国と日本での比較事例調査から、オリンピック開催が地方都市に与えるレガシー効果を考察することが本研究の意義であり、そのなかで、オリンピック単体だけでなく、他の要因も合わさることによってより高いレガシー効果が生じることが理解できたのは本研究の重要な点である。また国の政策としてオリンピックの地方都市への効果を作り出すという点では、英国の方がより階層的に、また戦略的に構築していると言える。本研究はその成果を、地方都市とオリンピックの関係を考察した書籍としてまとめるため作業を進めてきたが、出版に向けて今後も継続して行うものとする。
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