研究課題/領域番号 |
16K01704
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
奥田 邦晴 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 教授 (20269856)
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研究分担者 |
畠中 泰彦 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 教授 (10309601)
曽根 裕二 大阪体育大学, 教育学部, 講師 (40612172)
米津 亮 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 准教授 (50363859) [辞退]
片岡 正教 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 講師 (60611910)
岩田 晃 大阪府立大学, 総合リハビリテーション学研究科, 准教授 (90382241)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ボッチャ / 障がい者スポーツ / 脳性麻痺 / 筋力 / 自律神経 / スピードトレーニング / 呼吸機能 / 四肢麻痺 |
研究実績の概要 |
ボッチャはジャックと呼ばれる白い的玉に赤、青の皮製のボールを近づける重度障がい者を対象としたパラリンピックの正式競技である。ただ近づけるだけではなく、相手ボールを押したり、弾いたりすることも要求される。これらのニーズから、本研究は、従来から実施されてきた痙性減弱を目的としたストレッチ等のトレーニング方法を、より積極的な筋力増強等を目的としたプログラムに変更・実施し、これらの効果について明らかにすることを目的とした。我々は、投球可能距離がボッチャ選手のパフォーマンスの一指標となることを明らかにしており、筋力増強、体幹機能向上、心拍数上昇等を目的とした新しいトレーニングプログラム“ボチトレ”を開発、導入し、主にボッチャ強化指定選手を対象に実施している。一般社団法人日本ボッチャ協会主催の医科学合宿を中心に、年4回の合宿時に、各々の選手のGMFM(粗大運動能力尺度)測定後、マット上での繰り返し寝返り運動、新しく開発したスピードトレーニング機器での上肢の交互運動、手動車椅子ランそして懸垂型歩行器歩行後の心拍数変化及び自律神経測定を実施した。自律神経機能については、普段より心拍数を上昇させる運動を継続的に実施すること により自律神経機能が賦活され,安静時に副交感神経優位になりやすいというが報告等 (菅原ら,2000)を参考に、ターゲットスポーツとしてのここ一発に強い選手となるよう、心拍数上昇を目的としたフィットネストレーニングを取り入れ、良好な結果に結びついている。呼吸機能測定も導入し、全ての選手においてシビアな呼吸機能低下が認められたため、呼吸筋トレーニングも一連のメニューに加えた。脳性麻痺選手の運動時の心拍数変化、交感神経-副交感神経バランスのデータが得られたとともに、重度障がい者のトレーニング効果を表す指標として、自律神経測定の有用性が示されたことも研究成果として大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ボッチャ選手は、障害の重度さから幼少期から運動負荷による心拍数上昇という事象をほとんど経験していないことが予想される。それらを目的とした運動プロトコールもない。そのため、自律神経系賦活を目的に、心拍数上昇を目的とした、重度障がい選手用の運動プロトコールとして、寝返りや起き上がり運動などの日常生活動作を素早く繰り返し行うなどのスピードトレーニングをより積極的に導入していくなど、新しく考案したトレーニングプログラム“ボチトレ”を導入することで、選手のパフォーマンスの向上が図れ、リオパラリンピックでのチーム銀メダル獲得につながった。また、2018年3月に三重伊勢市で開催したアジア・オセアニア大会でも、チームが金メダル、そして個人でもクラスBC1・BC2選手が金メダルを獲得し、本研究が良好な成績につながっていることが明らかになった。 本研究の開始以降、ボッチャの合宿等の練習メニューが、従来のストレッチを中心とした受動的なプログラムから、より積極的な筋力トレーニングや手動車椅子ラン、乗馬シミュレーターによる体幹機能向上トレーニング、呼吸訓練、歩行トレーニングなど、その内容が大きく変化してきていること、そして個々の選手のADL能力の上昇も認められるとともに、選手達のアスリートとしての意識変革にも寄与している。 重度脳性麻痺者を対象としたこれらの試みは、彼らがアスリートであるからこそ導入できていることもあり、これらの結果をリハビリテーション医学における脳性麻痺治療にも還元できるようにしていきたい。重度脳性麻痺選手のトレーニング効果を表す指標として、自律神経測定の有用性が示されたことも研究成果として大きい。
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今後の研究の推進方策 |
ターゲットスポーツであるボッチャでは、ここ一発・一投の成功が、勝敗に大きく影響する。自律神経機能を考えた場合,普段より心拍数を上昇させる運動を継続的に実施することにより自律神経機能が賦活され,安静時に副交感神経優位になりやすいというが報告されている (菅原ら,2000)。この副交感神経優位性がターゲットスポーツでは重要なポイントとなる。現在までに、重度脳性麻痺選手のトレーニング効果を表す指標として、自律神経測定の有用性についてあきらかになってきており、さらに対象者を増やし、縦断的研究を実施する。ボチトレを合宿時及び大阪、東京地区はもとより、さらに地域各地で展開し、対象者を増やしデータを蓄積していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
合宿等でデータを取ったため、謝金等が不要となったことによる。
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