研究課題/領域番号 |
16K01713
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
若吉 浩二 大阪経済大学, 人間科学部, 教授 (30191729)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 肢体不自由者 / 水泳 / 重心 / 浮心 / 欠損者 / 麻痺者 / 健康づくり |
研究実績の概要 |
本研究では、四肢麻痺や欠損といった前後左右のバランス保持がより困難な肢体不自由者を対象に、水中水平姿勢時の浮力と浮心重心間距離を求める測定法の開発と客観的評価の実施、浮心と重心のずれを解消し水平姿勢が保持できる有浮力水着の試作を目的とし、障害者の健康づくりにも寄与することを目指す。平成28年度は、これまでの方法を発展させ肢体不自由者のための水平面上における重心および浮心位置を測定できる装置を開発する。これまでは一軸の2点法であったが、水平面の二軸による3点法で行い、呼吸に伴う浮力・浮心重心間距離を、短時間に測定するシステムを構築することである。 被験者は、健常者1名、肢体不自由者8名(欠損者4名、麻痺者4名)であった。測定に当たって最初に健常者の被験者を対象に行なったところ、安全に問題なく測定できることを確認し、その後に肢体不自由者を対象に行った。 右大腿欠損者の結果について説明する。重心位置はx方向(左右、左方向を+)21.00±0.69mm、y方向(頭-足)607.12±2.18mm、浮心位置はx方向18.66±1.03mm、y方向601.93±4.97mmとなった。y方向の重心と浮心をみると重心の方が高い位置にある。これは、右大腿欠損であるため、下半身が下向きに働くトルクが減少し、浮心が重心より下向きに移動したと推察される。一方x方向では、左脚が下向きに働くトルクのみが発生するため、重心位置が左にずれたと考えられる。水中に入る事により左脚が浮力を受け、2mm程度中央付近に戻されたと推察される。また、多くの麻痺者は左側に傾く傾向があったが,麻痺の程度によって体の可動具合が変化することから,重心と浮心の位置について個々に特徴がみられるものと思われる。 以上のことから、測定システムの構築はある程度達成できたものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、研究課題として、「呼吸に伴う浮力・浮心重心間距離の二軸方向測定システムの構築と水中バランスの評価」を設定した。これまでの先行研究では、浮心と重心の位置関係は一軸方向(2点法、頭部-足部の方向)にて測定されてきた。しかし、今回の研究では、二軸方向(左右方向と頭部-足部の方向)にてそれらの位置関係を計測できるシステムを構築することであった。最初は4点に圧力センサーを取り付けて計測する予定であったが、頭部側に1点、足部側に2点の3点法にて面にかかる力の中心点を計測することとした。結果的には健常者、肢体不自由者のそれぞれの特徴を評価することができた。よって、現段階では測定システムの構築はある程度達成できたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の研究課題は、「肢体不自由者を対象とした有浮力水着着用による浮力・浮心重心間距離の補正とけのび 動作に及ぼす影響」とする。肢体不自由者の水中バランスの評価がある程度可能であること判明したことから、左右前後の浮心重心間のズレを補正できる有浮力水着の試作を行う。これまでは前後方向の補正ができる有浮力水着であったが左右のズレを補正することのできる水着を試作する。着用前と着用後で、浮心重心間距離の短縮が図れるかどうか検証する。さらに、水泳パフォーマンス実験として、非着用時と着用時のけのび動作の移動距離・移動速度、記録に及ぼす影響を比較・調査する。これによって、有浮力水着着用が、肢体不自由者に対する有用性について検証を行う。
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