本研究の目的は、3つの浮力の異なる有浮力ブイを大学水泳部所属男子水泳選手に装着した場合、水中での浮力・浮心重心間距離の変化はどうなるのか? また有浮力ブイ着用に伴う泳速度と血中乳酸濃度の関係はどうなるのかを調査検討した。 使用した有浮力ブイは、5N、10Nおよび15Nの3つの浮力を有するブイである。この有浮力ブイは、左右両腰にベルトで腰部と大腿部の2か所で固定した。被験者は日頃から水泳のトレーニングを行っている男子13名である。 浮力・浮心重心間距離の測定では、非装着時、5N、10N および15N有浮力ブイ装着時にて、蹴伸び姿勢による完全水没下で行った。被験者は口にスノーケルをくわえ、最大呼気と吸気を行うように指示し、換気量の変化と手部と側部の鉛直方向の力との関係から、換気量と浮力・浮心重心間距離の関係を調べた。非装着時と10N有浮力ブイ装着による水泳パフォーマンスへの影響を調査するため、泳速度と血中乳酸濃度の関係を調べる血中乳酸カーブテストを実施した。テスト方法は、200mを4本、1本目80%、2本目85%、3本目90%、4本目全力泳で行った。血中乳酸の測定は、200m泳後から1分後に、そして4本目の全力泳では、1分後と3分後に測定した。3分後にさらに血中乳酸濃度が上昇した場合は、5分後にさらに測定を行った。 換気量に伴う浮力・浮心重心間距離については、中性浮力時換気量はブイの浮力の増加に伴い有意に低下、浮心重心間距離も浮力増加に伴い有意に短縮した。また、血中乳酸カーブテストでは、非着用時は、着用時(10N)に比べ、同じ血中濃度であれば高い速度で泳げることが判明した。これらの結果より、有浮力ブイを装着することでより水中水平姿勢を維持することができるものの、水泳パフォーマンスには好影響をもたらすものではないものと考えられる。
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