研究課題/領域番号 |
16K01727
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
中井 直也 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90324508)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋サテライト細胞 / 骨格筋 / タンパク質合成 / アミノ酸 |
研究実績の概要 |
筋衛星(サテライト)細胞は骨格筋に存在する幹細胞であり、骨格筋の成長、再生、肥大に重要な役割を担っている。筋サテライト細胞の数や活性は運動や食事、加齢、糖尿病などの影響を受けることが報告されている。本研究の目的は、サテライト細胞による骨格筋機能の維持・増進メカニズムを解明することである。2017年度は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)代謝の律速酵素である分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体(BCKDH)を不活性化するBCKDHキナーゼ(BDK)を欠損させたマウス(BDK KOマウス)から、筋サテライト細胞を単離しその機能を解析した。BDK KOマウスはBCKDHが活性化されているためBCAA代謝が亢進している。解析の結果、BDK KOマウスの筋サテライト細胞の増殖能および筋管細胞への分化能は、野生型マウスの筋サテライト細胞と同等であった。さらに、これらの筋管細胞に対するBCAA刺激の影響を検討したところ、野生型マウス由来の筋管細胞に比してBDK KOマウス由来の筋管細胞は、タンパク質合成促進作用の指標であるp70 S6 kinaseのリン酸化レベルが有意に高かった。野生型筋サテライト細胞とBDK KO筋サテライト細胞を1:1で混合し、分化を誘導すると遺伝的背景の異なる核からなるキメラ筋管細胞が形成された。このキメラ筋管細胞では、BCAA刺激に対するp70 S6 kinaseのリン酸化レベルは、野生型とBDK KO筋管細胞の中間となった。以上のことから、BCAA代謝が亢進している筋管細胞は、BCAAに対する感受性が高まっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BCAA代謝が亢進しているBDK KOマウスから筋サテライト細胞を単離し、BCAA刺激に対する反応を解析し、BCAA代謝とタンパク質合成の関係について明らかにすることができた。一方、BCAA刺激によるタンパク質合成促進作用に関わるとされているアミノ酸トランスポーター(LAT1)やキナーゼ活性を有するVps34については発現量に差が認められず、BCAA代謝が亢進している筋管細胞でBCAA感受性が高まるメカニズムにこれらの因子は関与していないことが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き遺伝背景の異なる筋サテライト細胞の機能について検討を進める。BCAA代謝が亢進しているBDK KOマウスから単離した筋サテライト細胞については、BCAA感受性が高まるメカニズムについてさらなる解析を行う。さらに、2型糖尿病モデルマウスから採取した筋サテライト細胞の機能を解析し、糖尿病時の筋萎縮のメカニズムについて明らかにする。個体への筋サテライト細胞の移植実験は一部内容を変更し、in vitroでの解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたが、少額であり、次年度当初の消耗品の購入に使用する。
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