筋サテライト細胞は骨格筋に存在する幹細胞であり、骨格筋の成長・再生・肥大に重要な役割を担っている。筋サテライト細胞の数や活性は運動や食事、加齢、糖尿病などの影響を受けることが報告されている。本研究の目的は、筋サテライト細胞による骨格筋機能の維持・増進メカニズムを解明することである。最終年度は、分岐鎖アミノ酸(BCAA)飢餓とその後の再補充がタンパク質合成促進作用に及ぼす影響について検討した。マウス骨格筋より筋サテライト細胞を単離し、増殖・分化・融合を経て筋管細胞を形成させた。分化5日目の筋管細胞の培養液からBCAAを除くと、タンパク質合成促進作用の指標であるp70 S6 kinaseのリン酸化レベルが低下した。その後、BCAAを再補充するとp70 S6 kinaseのリン酸化レベルが基礎レベルよりもさらに大きく上昇した。BCAAを除く時間(飢餓時間)について検討したところ、BCAAの再補充効果は、BCAA飢餓6時間の群で最も高く、16時間では減少し3時間と同等になった。BCAA飢餓6時間の筋管細胞では、細胞のタンパク質分解機構であるオートファジーの指標となるLC3-II/LC3-Iの比が高まっていた。BCAA再補充効果におけるオートファジーの役割を検討するため、オートファジー阻害剤を添加したが、影響は認められなかった。以上の結果より、筋サテライト細胞におけるタンパク質合成促進作用に対するBCAA再補充効果には、最適なBCAA飢餓時間が存在することが明らかとなった。そのメカニズムにはBCAA飢餓によるオートファジーの亢進の影響は小さいことが示唆された。
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