研究課題/領域番号 |
16K01728
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
山岡 雅子 (遠藤雅子) 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (30336911)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2022-03-31
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キーワード | 胃腸障害 / 胃内容排出 / 消化吸収 |
研究実績の概要 |
一般的に,運動時には糖質を含んだスポーツ飲料がよく摂取されている。このことは,発汗で失う水分補給とともにエネルギーとして消費した筋グリコーゲンや血中グルコースの補充につながり,運動パフォーマンスの維持や向上に貢献すると考えられている。一方で,運動中の糖質飲料摂取は,吐き気,胃痛や腹部不快感といった胃腸障害を引き起こし,結果として,運動パフォーマンスを阻害することが指摘されている。胃腸障害を発症する要因のひとつに,摂取した飲食物の胃腸管内貯留があげられている。したがって,最大限の運動パフォーマンスを発揮するには,糖質飲料の胃から十二指腸への排出(GE)促進,さらにその先である小腸での消化吸収促進が鍵となる。本研究では,まず,糖質飲料のGEを促進する栄養学的操作方法について基礎的検討を行い,その結果を運動時に応用して胃腸障害との関連性を検討する。 口腔内の味覚刺激が,GEを変容する可能性が報告されている(Yamamotoら,2008)。そこで,平成28年度は,基礎的研究として,事前に糖質飲料を摂取した後,口腔内を甘味,塩味,酸味,苦味,うま味,無味の6種類の味で味覚刺激し,どの味覚刺激が糖質飲料のGEを促進するのかについて検討した。GEは,超音波法を用いた標準的な方法(Takeda ら,1996)に準拠した。糖質飲料のGEは,他の味と比較して,口腔内を甘味刺激した時のみ促進した。嗜好性は,甘味で最も好まれ,苦味で最も嫌われる結果となった。心拍数,平均血圧,自律神経活動,および食欲スコアには味による有意な差はなかった。糖質飲料摂取後に甘いガムやあめを摂取することは,胃腸障害の予防に有効な方法のひとつである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,追加採択となったため,実験期間が短いという問題が生じたが,実施予定であった実験を完了することができた。現在までのところ,順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の結果から,事前に糖質飲料を摂取した後,口腔内を甘味,塩味,酸味,苦味,うま味の5種類の基本味で味覚刺激すると,甘味のみで糖質飲料の胃内容排出(GE)が促進することを明らかにした。この実験では,甘味刺激としてグルコース溶液を用いたが,甘味を呈する糖質はグルコース以外にも多様に存在している。そこで,平成29年度は,GEを促進する糖の種類を探索する。仮に,GEを促進する糖をいくつか発見できた場合は,次のステップとして,それらの糖を異なる濃度に調製し,GEがさらに促進するような濃度を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は追加採択となり,1年間での年度計画的な使用が困難であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の繰越金(1,000,128円)は,平成29年度に当初の研究計画に加えて,追加実験を実施する予定であり,それらに必要な経費(消耗品代,被験者代,測定補助者代等)に充当する予定である。
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