研究課題/領域番号 |
16K01728
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
山岡 雅子 (遠藤雅子) 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (30336911)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2022-03-31
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キーワード | 糖質の種類 / 糖質の濃度 / 胃内容排出 |
研究実績の概要 |
本研究室で行った実験結果から,事前に糖質飲料を摂取した後,口腔内を甘味,塩味,酸味,苦味,うま味の5種類の基本味で味覚刺激すると,甘味のみで糖質飲料の胃内容排出(GE)が促進することが明らかにされた。この実験では,甘味刺激として20%グルコース溶液を用いたが,甘味を呈する物質はグルコース以外にも多様に存在している。そこで,今年度は,GEを促進する甘味物質の種類を探索するために,20%グルコース溶液と甘味の強度を同等した4種類の溶液(グルコース,フルクトース,スクロース,アスパルテーム)を用いて,甘味物質の種類の違いが胃内容排出に影響を及ぼすか否かについて検討した。甘味の強さは,アスパルテームがグルコースと比較して有意に低下したが,その他の溶液間では有意な差はなかった。嗜好性は,アスパルテームと比較し,スクロースで有意に高かったが,その他の溶液間では有意な差はなかった。GEは,グルコースとフルクトースが他の溶液と比較して,15分目以降に有意に促進した。その他,血圧,心拍数,1回拍出量,総末梢血管抵抗,自律神経活動(心拍変動のスペクトル解析)に溶液間で有意な差はなかった。 また,次のステップとして,グルコース溶液を10,20,40%の3段階の異なる濃度に調製し,GEがさらに促進するような糖質飲料の濃度をした。甘味の強さは,グルコース溶液の濃度に依存して,有意に増加した。嗜好性および食欲には,各溶液間で有意な差はなかった。GEは,20%グルコース溶液が他の溶液と比較して,食後10分目以降に有意に促進した。その他,すべての生理的指標に溶液間で有意な差はなかった。これらの結果より,異なる濃度のグルコース溶液で口腔内を甘味刺激しても,食後のGEの促進は,甘味刺激の強さ依存ではなく,最適な強さ(やや強い~強い甘味)によって生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年8月21日~平成31年3月31日まで,産前産後の休暇および育児休業の取得により,研究を中断していたが,平成31年4月に復帰し,申請書作成時に予定していた平成29年度「異なる糖の種類による甘味刺激が糖質飲料のGEに及ぼす影響」と平成30年度「異なる糖濃度による甘味刺激が糖質飲料のGEに及ぼす影響」の2年分の実験を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
糖質飲料に含まれる糖質の種類と消化吸収に関する先行研究によると,単一よりも複数の種類の糖質を混合した飲料の方が消化吸収が速く,摂取した糖質からのエネルギー貢献率が運動時に高いことが報告されており,多種類の糖質を含む飲料が運動パフォーマンスの維持・向上の点で注目されている。さらに,運動パフォーマンスを考える上では,糖質飲料摂取時に活動筋への血流量が維持されることも非常に重要な観点となる。糖質飲料摂取時には水分や糖質の消化吸収のために消化管への血流量も増加する。つまり,運動時に糖質飲料を摂取すると,限られた心拍出量を活動筋と消化管の2つの組織で奪い合うこととなる。したがって,運動パフォーマンスに効果的な糖質飲料を消化吸収と循環調節の両面から考えると,素早い消化吸収が可能で,かつ,筋への血流量が維持される飲料であると考えられる。そこで今年度は,糖質の量を同等にしたグルコースとフルクトースの単一の飲料と各糖の比率を2:1と1:1に混合した飲料の4種類の飲料を運動時に摂取し,糖質飲料の種類の違いが消化吸収と循環調節に及ぼす影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属大学の業務等と国際学会の開催時期が重なり,国際学会への参加が難しく,次年度使用額が260,518円生じた。今年度もコロナの影響で国際学会への参加は難しいため,次年度使用額は,血漿フルクトース測定のためのキット代に充当する予定である。
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