脳血管は動脈の血液ガス分圧の変化に敏感で、高炭酸ガス吸入により脳血管は拡張し、著しく血流が増加する。同様に、低酸素ガス吸入により脳血管は拡張し、血流が増大する。これまで、高炭酸ガス吸入に対する脳血管拡張反応性は、有酸素性トレーニングにより改善したとする報告があるものの、横断的な研究では有酸素性作業能と高炭酸ガス吸入に対する脳血管拡張反応性との相関関係は一致した見解が得られていない。一方、低酸素に対する脳血管の反応性について、トレーニングの効果を見た研究はない。そこで、低酸素に対する脳の血管拡張反応性が、有酸素トレーニングにより変化するか否かを検証した。また、血圧脈波に対する有酸素トレーニングの効果についても検証した. 対象者を65歳以上の高齢男女とした。12週間の有酸素性トレーニング前後に,低酸素負荷に対する脳の血管拡張反応性,安静時血圧及び心拍数、心臓足首血管指数,有酸素性作業能,身体組成の測定を行った。自転車エルゴメーターを使用し、換気閾値強度で1回約60分,週3回の頻度の有酸素性トレーニングを課した.トレーニングは,北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センターのトレーニングジムで行った.結果、本研究の対象者においては、有酸素性作業能は、3か月間の有酸素トレーニング後、変化は認められなかった。同様に、身体組成、安静時血圧、心臓足首血管指数、低酸素に対する脳血管反応性に変化は認められなかった。唯一、心拍数がトレーニング後に統計的に有意に低下した。本研究の対象者においては、週3回のトレーニングは体力を改善することができず、血圧や心臓足首血管指数、そして、低酸素に対する脳血管反応性も変化させることができなかった。
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