研究課題/領域番号 |
16K01734
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
宮崎 照雄 東京医科大学, 医学部, 講師 (60532687)
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研究分担者 |
本多 彰 東京医科大学, 医学部, 教授 (10468639)
大森 肇 筑波大学, 体育系, 教授 (20223969)
池上 正 東京医科大学, 医学部, 教授 (40439740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 分岐鎖アミノ酸 / 中枢性疲労 / 脳 / 骨格筋 / エネルギー代謝 |
研究実績の概要 |
持久性運動時に骨格筋のエネルギー産生に分岐鎖アミノ酸の利用が高まる。分岐鎖アミノ酸の異化亢進は,骨格筋蛋白の分解を高めるため,生体にとっては不利益な状況をもたらす。そのため,末梢(骨格筋)のエネルギー代謝状態(アミノ酸異化状態)を中枢(脳)に伝える必要があり,骨格筋分岐鎖アミノ酸バリンの中間代謝物である3-hydroxyisobutyrate(3HIB)がその役割を担っている可能性がある。 平成29年度は,持久性運動で誘発される骨格筋分岐鎖アミノ酸異化の高まりにより,骨格筋より放出される3HIBが血液を介して,脳内で増加するのかを明らかにする事を目的として検討した。 一夜絶食したラットに,トレッドミル走行運動(20m/min)を0分, 30分, 60分, 120分間で負荷した。運動直後に,脳(大脳皮質,海馬,小脳)や下腿三頭筋(ヒラメ筋,腓腹筋),血液等のサンプルを採取し,3HIB濃度の変化を観察した。組織や血清中の3HIB濃度は,誘導体処理にて分析感度を高めてHPLC-MS/MS装置にて測定した。骨格筋3HIB濃度は,運動時間に依存して増加し,120分の走行後に最も高く有意な値を示した。骨格筋での濃度増加に伴って,血清中3HIB濃度も運動時間依存的に有意に増加した。脳内3HIB濃度も同様に,脳各部位で運動時間量に伴う有意な増加が見られた。 持久性運動による骨格筋での分岐鎖アミノ酸のエネルギー産生利用の増加に伴い,骨格筋から放出される分岐鎖アミノ酸の中間代謝物である3HIBが,脳で増加する事が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の培養細胞を用いたin vitroでの検討に続き,平成29年度は,実験動物を用いて,持久性運動により脳内に骨格筋分岐鎖アミノ酸の中間代謝物が蓄積する事を確認でき,2年間の研究成果としては,計画通りに進行していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
脳内への骨格筋分岐鎖アミノ酸の中間代謝物の増加が,運動パフォーマンスや脳内生理活性物質等に及ぼす影響について検討する事を目的として,脳室カテーテルにて3-hydroxyisobutyrateを投与し,行動解析や脳内物質の生化学的評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の動物実験を用いた実験が概ね順調に進み,計画していた内容の概算より節約しながら実行できた。 次年度は,実験動物に外科処置等を施して検討するため,必要な研究費が多くなる事が予測される。 さらに,最終年度になる次年度に,国際学会での発表を予定しており,旅費に使用する計画である。
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