研究実績の概要 |
本研究は、筋膜が踵骨変位量の増幅メカニズムと腱張力に及ぼす影響を実験的に検証し、シミュレーションを用いて筋膜の役割を増幅メカニズムと腱張力の観点から明らかにすることを目的としている。今年度は、本研究課題に関連した論文として、「Biomechanical gain in joint excursion from the curvature of the Achilles tendon: Role of the geometrical arrangement of inflection point, center of rotation, calcaneus」を執筆した。足関節底屈時のアキレス腱の動きは、解剖学的な障害物によって拘束されている。この論文は、より人体モデルに近いシミュレーションを用いて、この障害物の解剖学的位置が踵骨変位量に対する影響を調べたものである。障害物の位置がヒト生体における生理的範囲内にある場合、踵骨変位量の増幅作用(踵骨変位量がアキレス腱長変化を上回る現象)が認められることを、足関節底屈位だけでなく、背屈位においても観察された。この論文は、国際誌に投稿し、現在リバイスしている段階である。 また、健常ラットの深腓骨神経を直接電気刺激した際の最大足背屈張力を測定した。その際、高速度ビデオカメラを用いて、膜上に貼付したマーカーの変位を撮影した。試行は、①切除なし、②筋膜切除、③筋膜・筋上膜切除の3条件であった.。足背屈張力は切除なしと比べて、筋膜切除により約10%、筋膜・筋上膜切除により約30%も低下した。その際、長手・幅の両方向へのひずみは筋膜・筋上膜切除時に最も大きかった。膜組織の切除に伴う張力低下は、表層の膜による筋線維の拘束が開放され、他端の腱膜(深部)の変位が小さくなることに起因していると考えられた。
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