本研究の目的は、若年体操競技選手における腰痛の発生因子を解明することであった。そのため腰痛の原因ともなり得る腰椎椎間板変性に着目し、その発生割合および身体特性(筋の柔軟性・全身関節弛緩性)の関連性を調査した。 本年度は最終年度のため、研究期間中に調査を行った体操競技選手100名と我々が既に所有していた体操競技選手のデータ(約200名)の結果から、腰椎椎間板変性の発生割合とその特徴を明らかにした。腰椎椎間板変性の発生割合は45.6%(136/298)であった。また競技レベル別の結果では、地方レベル44.2%(19/43)、全国大会レベル44.3%(97/219)、国際大会レベル50.0%(18/36)であり統計処理の結果、先行研究と異なり競技レベルが腰椎椎間板変性の発生に影響を与えないことが明らかになった。しかしながら、脊椎高位別に検討したところ、L1/L2椎間板では国際大会レベルの選手で有意に腰椎椎間板変性が発生していることが明らかになった。この原因を明らかにするため、研究期間中に実施した2年間の前向き研究(対象者51名)の結果を基に腰椎椎間板変性と身体特性(筋の柔軟性、全身関節弛緩性)の関連性を検討した。その結果、2年間の前向き研究においても国際大会レベルの選手のL1/L2高位で椎間板変性の重症度が進行していた。また身体特性との関連性では、単変量解析の結果、筋の柔軟性(FFD)が高いほどL1/L2高位の椎間板変性の発生に影響を与えることがわかった。一方、全身関節弛緩性は椎間板変性の発生に影響を与えないことが明らかになった。 本研究により体操競技選手における腰椎椎間板変性の発生割合の特徴として、競技レベルおよび脊椎高位別に検討したところ、国際レベルの選手ではL1/L2高位の椎間板変性が好発していること、さらにその発生には筋の柔軟性(FFD)が関連性していることが明らかになった。
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