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2018 年度 実施状況報告書

鉄欠乏状況下において身体運動能力の低下を惹起する骨格筋内の分子機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K01742
研究機関新潟医療福祉大学

研究代表者

越中 敬一  新潟医療福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30468037)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード鉄代謝 / 骨格筋 / インスリン抵抗性
研究実績の概要

鉄欠乏による貧血状態下において確認される一般的な身体運動能力の低下は、活動筋である骨格筋への酸素の供給低下が主因であると考えられている。一方本研究では、その主因を骨格筋自体に求め、酸素の供給に非依存的な解糖系における代謝障害を根本要因とする仮説を検討する。また、筋疲労との関わりにおいて骨格筋における鉄代謝と糖代謝とのクロストークを明らかにし、代謝障害を引き起こす分子機序の解明を試みる。
骨格筋のインスリン作用はグリコーゲンの貯蔵量やグリコーゲン枯渇からの回復速度を決定する重要な因子であり、身体運動能力の発揮に強く関与する。昨年度までの研究において、鉄欠乏状況下では血糖値が有意に上昇することから全身性のインスリン抵抗性が生じていると仮定し、骨格筋のインスリン作用を単離骨格筋において評価してきた。しかしながら、これまでに鉄欠乏食の摂取において骨格筋のインスリン作用の減弱を確認できていない。2018年度の研究においては、鉄欠乏食の摂取によって、安静時のグリコーゲン量の増加傾向やミトンドリアの増加傾向など、むしろ身体能力の向上を目的とする上で有益と思われる代謝適応が認められた。興味深いことに、鉄欠乏食の摂取により、肝臓から分泌される生理活性物質の発現量が低下することを確認した。この分子は骨格筋のインスリン作用を負に調節し、骨格筋のトレーニング効果を低下させる分子である。よって、鉄欠乏食の摂取によるこの分子の低下は、骨格筋に影響を及ぼし、貧血状態下による身体能力の低下を補填する働き、もしくは、運動の種類の違いによればトレーニング効果を増強する働きを担う可能性も示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

予定していた研究期間は2019年3月末までであったが、学科のカリキュラム変更にともない、最終年度における大学業務に対するeffortが著しく増加してしまった。このことが起因となり研究計画に大幅な遅れが生じてしまった。
また、仮説と反した結論につながり得る結果が集積しつつある。そのため、研究計画に示した実験の条件を追加するなど、より深い検討が必要になっている。
以上の理由により、研究計画の遂行とその成果をより高めるため1年間の研究機関の延長を希望し、承諾を得るに至った。

今後の研究の推進方策

最終年度の実験計画通り、トレーナビリティーに関する研究を継続する。これまでに自発運動による実験モデルにおいてトレーニングを負荷していたが、鉄欠乏状況下では運動量が有意に低下を示しており、トレーニング効果の比較に難があった。2019年度では、運動負荷を同一化する目的で8日間の水泳運動を負荷し、同一のトレーニング量において鉄欠乏食の摂取によるトレーニング効果への影響を比較・検討する。
また、その際に肝臓での生理活性物質の発現解析に加え、血液中濃度の測定を進める。鉄欠乏による骨格筋の代謝応答に、肝臓由来の生理活性物質が影響を与えている可能性が予想される。生体内において骨格筋のインスリン作用を測定し、単離骨格筋による解析結果と比較・検討することによって肝臓由来の生理活性物質の関与を見積もる。

以上の結果をまとめ、2020年に学会および学術雑誌での発表を予定している。本研究では、主題にある通り、鉄欠乏状況が身体パフォーマンスへ影響を与え得る代謝変化の分子機序の他、生活習慣病の発症機序など、鉄代謝と糖代謝のクロストークを解析する上で一定の見解が得られるよう、努める予定である。

次年度使用額が生じた理由

予定していた研究期間は2019年3月末までであったが、学科のカリキュラム変更にともない、最終年度における大学業務に対するeffortが著しく増加してしまった。このことが起因となり研究計画に大幅な遅れが生じてしまった。また、仮説と反した結論につながり得る結果が集積しつつある。そのため、研究計画に示した実験の条件を追加するなど、より深い検討が必要になっている。以上の理由により、研究計画の遂行とその成果をより高めるため1年間の研究機関の延長を希望し、承諾を得るに至った。2019年度において、最終年度の実験計画通り、トレーナビリティーに関する研究を継続予定であり、その遂行のために繰越の研究費を使用する。

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公開日: 2019-12-27  

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