研究課題/領域番号 |
16K01753
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平井 伸英 東京医科歯科大学, 学生支援・保健管理機構保健管理センター, 准教授 (90333369)
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研究分担者 |
久保 位可子 東京医科歯科大学, 職員健康管理室, 臨床心理士 (40736394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 運動 / 睡眠 / メンタルヘルス / 医学生 / 研修医 |
研究実績の概要 |
学生から社会人になる期間はメンタルヘルスの問題が増える時期であり、研修医についても研修開始後2か月で約4分の1が新たにうつ状態となるとの報告がある。この背景には、様々なストレス要因があると推定されているが、日常生活の変化も影響を与えていることが予想される。この研究は、研修医になる前から研修開始後までの期間の日常生活の変化を調査し、メンタルヘルス不調との関係を調べることにある。 本研究ではウェアラブル・デバイスを用いて、被験者の睡眠覚醒リズムや運動に関する情報をインターネットを介して収集し、またインターネット上のサーバに設置した質問票に定期的に回答してもらうことで、メンタルヘルスの状態を継続的に収集する。これにより、医学生が研修医となって、大学を離れてからも、継続的にデータ収集が可能となる。 2016年度は、市販されているウェアラブル・デバイスについて、価格や充電一回当たりの記録時間、プログラムの作りやすさなどを検討し、利用するデバイスとしてJawbone社のUP3を採用、データ収集のためのシステムを作成した。6月にはプログラムの最初のバージョンをリリースし、インターネットからアクセス可能なサーバに設置、システムの検証を開始した。並行して、7月には研究計画書を倫理審査委員会に提出。審査委員会からの指摘事項への対応を行い、結果10月に承認を受けた。この後、本学の医学部医学科6年生に対して、ポスターおよびメールにてリクルートを行い、12月までに22名の参加者を得た。12月(一部の参加者は1月)よりデータ収集システムによる調査を開始。12月下旬から3月にかけて、アクチグラフを併用した、ウェアラブル・デバイスの検証を全参加者に行った。その後、データ収集システムを用い、調査を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算上の制約のため、データ収集のためのプログラム作成を専門業者に外注することが困難であったことから、研究計画を修正し、研究で用いるウェアラブル・デバイスを、よりプログラムが作りやすいものに変更し、プログラムを研究者自身が作成した。この変更により、ウェアラブル・デバイスの費用が膨らんだが、倫理委員会から指摘された修正事項に柔軟に対応できたなど、研究計画の遂行に有利に働いた面もあった。また当初の計画ではプログラムを学内のサーバに設置する予定であったが、短期間での設置やメンテナンス作業軽減目的で、外部のプログラム設置用サーバを利用した。このサービスは米国のAmazon社のサーバを利用しており、これまでのとことろダウンすることなく安定動作している。 倫理委員会の承認が10月までずれ込んだため、8月に開始を予定していた参加者のリクルート開始が約2か月遅れたものの、当初予定していた20名とほぼ同数の22名の参加者を得ることができ、1月からは全員の記録を開始することができた。また3月までに、予定していたアクチグラフ併用による検証実験も全員無事に終えることができた。3月31日時点では全参加者から睡眠、運動、メンタルヘルスに関する情報を得ることができている。 ウェアラブル・デバイスの故障が予想より多く、追加購入する必要が生じたが、ウェアラブル・デバイスの価格が下がってきていることもあり、当初の予算にほぼ収まっている。今後同じペースでウェアラブル・デバイスが故障した場合も、予定していた予算の中で対応可能と予想される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、2019年3月まで調査を継続する方針。そののち、2019年度にはデータ解析を行い、学会や学術雑誌での発表を行う予定。 2016年度に実施したアクチグラフによる活動量計の検証データの解析については、本年度中に行い、可能であれば今年度中の学会で発表、来年度には学術雑誌で発表することを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、参加者全員に謝金を支払うことを予定していたが、予算上の制約から、基本的には謝金を支払わない計画に変更した。その上で、参加者にウェアラブル・デバイスを配布し、ウェアラブル・デバイスの動作に必要な通信端末としてタブレットを貸与した。また、参加者自身がスマートフォンなどの通信端末を持っている場合は、それを利用して参加することを可能とし、その場合は参加者に謝金を支払うこととした。しかし、自身の通信端末を利用する参加者が想定より少なかったため、謝金の額が圧縮された。一方で、貸与のための通信端末の購入費用が増え、またウェアラブル・デバイスの故障や破損等が想定より多いなど、機器購入のための費用が膨らんだが、プログラムの外注を取り止めたことで、全体として若干の繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
機器の故障等が予想よりも多いことから、次年度以降、追加で必要となる機器の購入費用に充てる。また、プログラム開発やサーバ運用を自前で行うよう計画を修正したことにより、今後、得られたデータのバックアップや、プログラム保守のためのソフトウェアなどの費用が必要となることが予想されるため、それに充てることを計画している。
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