研究課題/領域番号 |
16K01754
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
藤本 浩一 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10287815)
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研究分担者 |
千足 耕一 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70289817)
山川 紘 東京海洋大学, 学内共同利用施設等, 客員教授 (80017061) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海女 / 腰痛 / 鉛玉分散装着 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、ヨーロッパ地中海沿岸の素潜り漁師が鉛玉分散装着のために使用している、ウエットスーツ生地で作成された鉛玉を入れて使用するベストを購入し、実験参加の意思表明を受けた三重県志摩市の7地区に在住する海女1 2名に試着してもらう事から研究を実施した。実際の漁で試用してもらったところ、以下の3点について、さらなる改良を必要とすることが新たに判明した。①全般的な装着感に難点ある(潜行時にベストがずれる)、②船を利用する海女は、漁の終了後に船に上がる際に、ベストを外した方が上がりやすく、脱着が容易でなければならない、③従来の鉛玉では形態的にベストのずれを誘発しやすいので、鉛玉の形状を変更しなければならない。また、昨年度から継続する懸案事項である、④海中の岩棚奥まで身体を入れてアワビを採捕する漁の形態を取る地区においては、背部に分散装着した鉛玉が岩棚にひっかかる件についても改良の必要があることから、本件と合わせて、計4点の改良を8月より開始し、現地での調整を重ねた。その結果、上記③の鉛玉の形状変更については、1枚600g鉛板を作成することによって解決できたものの、残り3点の改良点については、現地の海女においては、自身の漁が最優先であることから、試用→改良のプロセスの進行は芳しくなく、さらに、数名の海女からは本研究への参加を辞退する申し出があった。COVID-19の影響もあり、11月まで現地での調整を重ね、その後も電話連絡等で調整を重ねたものの、計3件の改良点については解決できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和元年度中は、研究に参加する海女それぞれにおいて、漁の形態に合った独自の方法で、腰部に集中して装着していた鉛玉をベストに入れて背部等に分散させて装着した結果、腰痛軽減効果が有ったか否かを検証する研究を実施する予定であった。しかしながら、ベストには数種類が存在し、海女にカタログ写真を提示し、自身の漁の形態や身体サイズに合うものを選定してもらったところ、海女自身もこれまでベストを装着した経験がなかったことから、想定外に多くの時間を要し、本作業の完了までにおよそ3ヶ月を要した。また、選定作業終了後に、ヨーロッパの業者へ6種類、計10着のベストを発注したものの、到着の遅れもあり、海女への試着を開始できたのが8月であった。さらに、「研究実績の概要」で示したとおり、装着方法について、改良すべき課題が3点、新たに明らかとなり、1点は解決できたものの、平成30年度から継続の課題1点と合わせて計3点の課題が、令和元年度中に解決できなかった。以上のことから、上記の検証研究を令和元年度中に実施することを見送り、研究期間を1年延長することとした。また、COVID-19の影響により、令和2年1月以降は、現地に赴いて対面での調整等を行うことが不可能となってしまったことから、さらに進捗に遅れが生じてしまった。聞き取りや調整作業を対面以外で行う方法も試みたが、電話では、ベストの実物を、研究者と参加者の両者によって確認しながら聞き取りや調整作業を実施することが不可能であったため、奏功しなかった。遠隔会議システムは、参加者に相応の通信環境とPC環境が無く、こちらは実現不可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
研究に参加する海女には高齢者も含まれており、COVID-19による症状の重症化が懸念されること、さらに、COVID-19による症状の完治後、呼吸器系に潜水作業を行うことが困難になるほどのダメージが残る可能性も指摘されていることから、研究参加者からの対面による聞き取りや調整が困難となってしまったことは、研究進捗の大きな妨げとなっている。新たな方法を模索しているが、「現在までの進捗状況」で示したとおり、電話は奏功せず、遠隔会議システムは実現不可能であったことから、有効と思われる方法は現在のところ見つかっていない。しかしながら、遠隔で研究を進めるならば、現状、電話で可能なレベルの聞き取りや調整作業を進めるより他に、方法は無いものと思われる。このような状況下では、研究に参加表明している海女の数も、さらに減少することが予測されるが、令和2年の秋頃までにベスト装着に関する3点の改良点を解決し、腰部に集中して装着していた鉛玉をベストに入れて背部等に分散させて装着した結果、腰痛軽減効果が有ったか否かの検証を始めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 全般的な研究進捗の遅れによるもの。 (使用計画) ウエイトベストと補充とその改良費、研究フィールドまでの旅費で使用する計画である。
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