研究課題/領域番号 |
16K01754
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
藤本 浩一 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10287815)
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研究分担者 |
千足 耕一 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70289817)
山川 紘 東京海洋大学, 学内共同利用施設等, 客員教授 (80017061) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 海女 / 腰痛 / 鉛玉分散装着 |
研究実績の概要 |
令和3年度も令和2年度と同様に、COVID-19感染拡大の影響を受け、研究遂行が著しく制限されたが、令和3年度は、令和2年度に実施できなかった本研究の調査対象地域である、三重県志摩市に在住する潜水漁業者を対象とした、ウエイトベストの着用状況に関する調査を実施した。しかしながら、当初予定していた対面での聞き取り調査については、COVID-19感染防止対策を優先させ、実施することができなかったことから、作成した質問内容をウェブ上の入力フォームに移植し、調査対象者からの回答は、ウェブ上の入力フォームにテキスト情報として入力してもらうことによって得た。さらに、得られた回答については、後日、回答から1週間以内に電話によって内容等の確認・照会を実施した。 その結果、ウエイトベストの着用は、潜水漁業者の腰痛を明らかに緩和させる効果を有することが確認できた。しかしながら、着用にあたっては、特に、頭を下にした状態で潜行する際に鉛玉を入れたベスト自体が頭部側へずれることを防止する工夫が必須であり、さらに、この工夫の状況は、個人の性別、身体特性、操業状況の差によって個別的なものであることが明らかとなった。また、腰痛が有りながらもウエイトベストの着用を見送っている潜水漁業者においては、この工夫を適切に実施できなかったことが、着用見送りの第1要因となっていることが確認された。 令和3年度の調査結果から、本研究の解明目標のひとつである、「ウエイトベストの着用は潜水漁業者の腰痛に対する緩和効果を有するか否か」については、令和3年度の調査によって、緩和効果を有することが確認できた。一方で、もうひとつの解明目標である、「安全性および潜水パフォーマンスを阻害しないウエイトベストの着用方法」については、画一的な着用方法を提案するのは困難であることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和3年度は、令和元・2年度よりCOVID-19の感染拡大状況に合わせた度重なる研究計画の変更を実施した結果、研究のアプローチ方法も当初計画から大幅に変更したため、研究課題の解明に関する観点から見れば「遅れている」ものの、逆に「速める」ことも、未だ継続している感染拡大防止に関連する様々な制約や、COVID-19感染拡大の影響等による社会状況等の変化も相まって非常に難しい。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、令和3年度の調査によって確認された、ウエイトベストの着用が潜水漁業者の腰痛に対する緩和効果を有する件について、ウエイトベストに挿入する鉛玉の重量、形状、配置位置など、令和3年度の調査より、さらに詳細なデータを取得する予定である。 また、令和3年度の調査から、ウエイトベストの着用は腰痛を緩和させる効果を有するものの、腰痛を有しながらウエイトベストの着用を見送っている潜水漁業者は、自身の身体特性や操業状況に適合する安全かつ潜水パフォーマンスを阻害しない着用方法を確立できないことが、着用見送りの第1要因となっていることが推測された。この課題をクリアするための支援として、着用方法のバリエーションおよびその特性をまとめ、自身に適合する着用方法の模索が容易となるようなディシジョンツリー(もしくはテーブル)の作成も視野に入れた、追加データの取得と提示を計画している。さらに、データ提示の方法については、ある程度、操業状況が同一である漁場ごとに、望ましい着用方法も模索してゆく。 一方で、本研究はCOVID-19感染拡大の影響以外にも、2017年8月より始まった黒潮大蛇行の影響等により、特に志摩市南部で生じている大規模な磯焼けが研究進捗の大きな阻害要因となっている。磯焼けによるアワビ、サザエ等の資源量の激減とともに、COVID-19感染拡大によるアワビ、サザエ等の需要低迷と価格下落の影響を受け、調査対象者である潜水漁業者は漁期短縮を強いられ、なかには廃業してしまう方も少なくない。このような状況下で調査への協力を依頼するのは非常に困難であり、有効な解決策も見つからないことから、本年度もリモートでの調査をメインとして研究を実施したいが、調査方法についてもさらなるアップデートが必要と考えられるとともに、調査対象者との協力関係の維持についても、注力を要するものである。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)COVID-19感染拡大および調査対象者である潜水漁業者の操業状況の変化の影響により、当初の研究計画より大幅な変更が生じざるを得なかった為。 (使用計画)物品費は、ウエイトベストの着用方法の改善のため、複数種のウエイトベストの購入、ならびに進捗状況に応じて全く新規のベストを作成するために使用することを計画している。また、当初予定していたが、COVID-19感染拡大で見送っていた国外の国際学会での成果発表も、制限が緩和されつつあることから、本件に関する旅費を使用する計画である。さらに、本年度も調査自体は主としてリモートで実施する方針であるが、国内のCOVID-19感染拡大防止対策の変化に応じて、調査対象地域に赴いて、対面による調査が可能な状況となれば、このための旅費を使用する可能性もある。
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