小学校高学年の意思決定スキル尺度開発については,昨年度に採択決定として報告した。 中高の保健教科書における意思決定については、意思決定の具体的場面、様相(熟慮・直観,選択肢列挙,結果予想)を分析した。その結果,中学校では,意思決定場面は,「傷害の防止(応急手当を含む)」「心身の機能の発達と心の健康」の順に多かった。様相では,「傷害の防止」では直感型,他の単元では熟慮型が多かった。また選択肢は複数想起が多く,結果予想は少数であった。高校では,意思決定場面は中学校の1/4程度であり,小単元「安全」では直感型、他では熟慮型であった。選択肢は複数想起で、結果予想もされていた。中学校では,多様な課題で意思決定指導ができるものの,直感型が多く,バイアスや情動の影響の認知,その対処の指導が,熟慮型では多面的な結果予想が必要である。高校では、社会的意思決定,情報活用、バイアスなど固有の内容が必要と考えられた。 次に,高校生がイメージするリスクを探るため,公立高校1年生224人に,リスクに関する講演後,「大きなリスクと考える事柄」3つとその理由を尋ねた。その結果,自然災害や交通事故等を97%が挙げた。さらに,学業や学校生活,入試や進路,生活習慣,スマホやインターネット,日常生活でのトラブル,環境・社会経済問題など挙げられ,安全や健康,キャリア,将来の生活,社会問題など多岐にわたった。これらのリスクは様々の教科等で取り上げられており,教科横断的に扱える可能性を確認した。 さらに,思春期の意思決定の特徴を簡潔にまとめた。その内容としては,リスク評価は成人期と同等であること,ただしリスク認知が相対的に低い場合危険行動をとりやすいこと,仲間,感情,メディアなどの内的,外的要因の影響を受けやすいことを挙げた。以上から,リスク認知を高める熟慮型の指導の必要,影響要因の認知と対処の指導の必要を提案した。
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