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2018 年度 実施状況報告書

楽観主義者に健康をもたらす心身の反応性と回復性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K01769
研究機関東京成徳大学

研究代表者

本多 麻子  東京成徳大学, 応用心理学部, 准教授 (90339680)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2020-03-31
キーワード楽観性 / 感情 / ストレス / 反応性 / 回復性 / 心拍数
研究実績の概要

本研究の目的は楽観主義者の心身の健康の保持・増進のメカニズムを心身の反応性と回復性の観点から検証することである。実験と質問紙調査を行った。
実験では運ゲーム条件とスキルゲーム条件を設定し,楽観性,悲観性と心拍数の反応性と回復性の関連を検討した。その結果,運ゲーム条件において,心拍数の回復時間は悲観性得点が高いほど延長し,楽観性得点が高いほど短くなる傾向があった。心拍数の回復性は,悲観性が高いほど遅れ(脆弱化あるいは硬直化),楽観性が高いほど速やかになる(強壮化あるいは柔軟化)という可能性が示唆され,ポジティブヘルスを考慮すると望ましい結果であった。
長期的課題の遂行に際して,ストレッサーとしての伸び悩み経験や停滞に着目し,調査を行った。楽観傾向群と悲観傾向群を設定し,長期的課題遂行時の伸び悩み経験と楽観性,レジリエンス,Gritの関連を比較した。その結果,楽観傾向群の資質的レジリエンスは楽観性,Grit,根気と正の相関があり,悲観性と負の相関があった。楽観傾向群の資質的・獲得的レジリエンス,Grit,根気は悲観傾向群よりも高かった。また,長期的課題における伸び悩み経験と経験時の工夫および楽観性,レジリエンス,Gritの関連を検討した。資質的・獲得的レジリエンスはいずれも楽観性,Grit,根気と正の相関があり,悲観性と負の相関があった。Gritと根気はいずれも楽観性と正の相関,悲観性と負の相関があった。伸び悩み経験時の工夫や努力は動画を撮る,自主練習,基礎的なトレーニングを行うなどであり,伸び悩み経験の客観視や,通常とは異なる練習による気晴らしに相当するストレス・コーピングを行う可能性が示唆された。これらの調査結果から,楽観性が高いほど,伸び悩みや停滞などのストレッサーに対しても粘り強く,克服すべく課題に取り組み続けることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

楽観主義者の心身の健康の保持・増進のメカニズムを心身の反応性と回復性の観点から検証するために,当初の研究実施計画に調査を追加した。
長期的課題の遂行において,伸び悩み経験や停滞はストレッサーとなる。ストレッサーに屈せず,課題を継続するには情熱と粘り強さから構成され,楽観性と関連するGritが必要となる。また,困難の克服を意味するレジリエンスには,生得的な気質との関連が強い資質的レジリエンス要因と,発達的に身につけやすい獲得的レジリエンス要因がある。長期的課題における伸び悩み経験と楽観性,レジリエンス,Gritの関連を楽観傾向群と悲観傾向群で比較した結果,楽観傾向群の資質的レジリエンスは楽観性,Grit,根気と正の相関があり,悲観性と負の相関があった。楽観傾向群の資質的レジリエンス,獲得的レジリエンス,Grit,根気は悲観傾向群よりも高かった。長期的課題遂行時のストレッサーに対して,レジリエンスとGritの高さが楽観主義者に恩恵をもたらす可能性が示唆された。
ポジティブヘルスとは単に疾病がないだけではなく,楽観性やポジティブ感情などの主観的変数,心臓血管系指標などの生理的変数,対人関係などの機能的変数から構成され,健康増進や長寿をもたらす。楽観性と心臓血管系には関連があり,ストレス刺激に対する心臓血管系の反応率と回復率はいずれも大きい強壮化と,反応率が小さく,回復率が大きい柔軟化が望ましい。ゲーム課題を用いて楽観性,悲観性と心拍数の反応性と回復性の関連を検討した。その結果,運ゲーム条件において,心拍数の回復時間は悲観性得点が高いほど延長し,楽観性得点が高いほど短くなる傾向があった。心拍数の回復性は,悲観性が高いほど遅れ(脆弱化あるいは硬直化),楽観性が高いほど速やかになる(強壮化あるいは柔軟化)という可能性が示唆され,ポジティブヘルスを考慮すると望ましい結果であった。

今後の研究の推進方策

本研究の目的は楽観主義者の心身の健康の保持・増進のメカニズムを心身の反応性と回復性の観点から検証することである。
調査の結果から,長期的課題遂行時の伸び悩み経験や停滞などのストレッサーに対して,楽観傾向群の資質的レジリエンスは楽観性,Grit,根気と正の相関があり,悲観性と負の相関があった。楽観傾向群の資質的レジリエンス,獲得的レジリエンス,Grit,根気は悲観傾向群よりも高かった。長期的課題遂行時のストレッサーに対して,レジリエンスとGritの高さが楽観主義者に恩恵をもたらす可能性が示唆された。実験の結果から,コントロール可能性の低い運ゲーム条件において,悲観性得点が高いほど回復時間が延長し,楽観性得点が高いほど回復時間が短くなる傾向があった。心拍数の回復性は,悲観性が高いほど遅れ(脆弱化あるいは硬直化),楽観性が高いほど速やかになる(強壮化あるいは柔軟化)という可能性が示唆された。
これらの結果を考慮して,今後の研究ではコントロール可能性を考慮したうえで,ストレッサーに対する心身の反応性と回復性についてさらなる調査と実験を行う。ストレッサーに対してコントロール可能性が高い場合(ストレッサーによる損害が小さい,対処の効果が期待できる場合)とコントロール可能性が低い場合(ストレッサーによる損害が大きい,対処が困難あるいは対処の効果が比較的小さい場合)の比較検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

当該年度の支出は主に,成果報告として国内の学会出張などの旅費,消耗品の購入,人件費・謝金であった。高額な物品の購入や国外の学会出張を行わなかったため,次年度使用額が生じた。
初年度にワイヤレス生体センサーRF-ECG2,記録解析用ソフトウェア(心拍変動リアルタイム解析プログラム)を購入した。ワイヤレス生体センサーのRF-ECG2の追加購入あるいはソフトウェアを使用する際のUSBキーの購入を検討している。また国外の学会出張を伴う成果報告の旅費と,実験協力者への謝金,データ整理やデータ入力等の人件費・謝金を予定している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] 楽観性・悲観性および心拍数の反応性と回復性の関連2019

    • 著者名/発表者名
      本多麻子
    • 雑誌名

      東京成徳大学研究紀要

      巻: 26 ページ: 141-150

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 楽観性・悲観性および精神生理学的指標の反応性と回復性2018

    • 著者名/発表者名
      本多麻子
    • 学会等名
      第36回日本生理心理学会大会
  • [学会発表] 長期的課題における伸び悩み時の反応と克服―楽観傾向群と悲観傾向群の比較―2018

    • 著者名/発表者名
      本多麻子
    • 学会等名
      日本応用心理学会第85回大会
  • [学会発表] 長期的課題の遂行と伸び悩み経験―レジリエンスは継続期間と一貫性ではなく,楽観性と根気と関連する―2018

    • 著者名/発表者名
      本多麻子
    • 学会等名
      日本心理学会第82回大会

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公開日: 2019-12-27  

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