研究課題
文部科学省(2018)の「教員勤務実態調査」により,全国の学校教師の約60%が「過労死ライン」に到達する残業をしていることが判明した。教師の多忙化は,離職や精神疾患の増加との関係も示唆されている。一方,産業メンタルヘルス研究では,同程度のストレスが負荷しても,環境要因によりメンタルヘルスの悪化が抑制されることも示されている。現在,勤労者のメンタルヘルスにポジティブに機能する概念として,「ワークエンゲイジメント(以後,WEと略)」があげられる(Schaufeli, 2004; 島津,2010)。そこで本研究では,教師のWEを規定要因となる組織環境を検討した。中学校及び高校に勤務する教師を対象に,「教師版のワークエンゲイジメント(以後,WETと略)」と「教師の集団効力感(以後,CETと略)」への各回答を求め,2尺度間の関係性について分析を行った。分析は,WETを構成する4下位因子を従属変数に,CETを構成する7下位因子を独立変数とした重回帰分析を行った。その結果,すべてに有意な決定係数が得られ,さらに複数の有意な正の偏回帰係数が認められた。分析の結果より,CETの下位因子は,「同僚との協力体制」以外の6つの下位因子がWETの規定要因となることが示された。このため,CETの向上がWETを向上させることが推測され,特に,複数の従属変数に対して有意な偏回帰係数が認められた「学校での責務遂行」や「教員間の相互援助」が重要な要因となることが示された。今後は,具体的にCETを向上させるための介入方策を検討し,WETのポジティブな変容へと繋げたいと考えている。なお,本研究内容を2019年度の日本精神衛生学会第35回大会(於;別府大学)にて一般演題として発表したところ,大会における優秀発表賞として選考された。
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Journal of Health Psychology Research
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10.11560/jhpr.17035091