研究課題/領域番号 |
16K01774
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
勝又 聖夫 日本医科大学, 医学部, 助教 (80169482)
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研究分担者 |
川田 智之 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (00224791)
稲垣 弘文 日本医科大学, 医学部, 講師 (50213111)
平田 紀美子 日本医科大学, 医学部, テクニカルスタッフ (70445815)
武藤 三千代 日本医科大学, 医学部, 准教授 (80174457)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アンチ・ドーピング / ニコチン / タバコ製品 / 健康教育 |
研究実績の概要 |
今年度は、①日本体育協会に所属する団体や都道府県体育協会へのタバコ対策やアンチ・ドーピング教育実施等のアンケート調査の実施②使用形態の異なるタバコ製品(紙巻きたばこ、加熱式タバコ、無煙タバコ)中のニコチン量を測定した。 ①について、回答数(率)は115団体中56団体(48.7%)であった。団体に関係する選手や役員などの関係者の喫煙率の把握で喫煙率が記されていたのは2団体(10.0%,14.8%)のみであった。また、アンチ・ドーピング教育に関しては、ほとんどの団体で行われていたが、ニコチンがドーピング防止規程の監視対象物資であることの認知度は低く、周知する努力が必要であり、喫煙者への禁煙教育の実施も十分に行われていない現状が抽出された。従って、今回のアンケート調査結果から、喫煙者に対する取り組みが団体組織により大きく異なっていることから、日本体育協会で、防煙教育を始めタバコ対策の方向性を示す必要がある。 ②について、各タバコ製品の葉から溶出したニコチン量は、紙巻きタバコは20.9±1.4mg/g、加熱式タバコ(電子タバコ)は21.9±2.6mg/g、無煙タバコは10.4±0.6mg/gであった。また、各タバコ製品のニコチンの体内取り込み方法に基づいて採取した試料中のニコチン量は、紙巻きタバコの1本消費した時の主流煙で空気孔開放時に165.9±129.1μg/mL、空気孔閉鎖時で364.4±37.2μg/mLであった。加熱式タバコ(電子タバコ)は10回吸引した時の蒸気捕集液中で72.3±15.8μg/mLであった。今回の結果より、紙巻きタバコと同様に、加熱式タバコ(電子タバコ)や無煙タバコにもニコチンが含まれており、ニコチン依存症や健康被害を引き起こす可能性が示唆できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展している。次年度以後に実施する体力テストに関わる対象者の募集や実施方法の詳細な検討を継続的に行う。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、タバコ製品には安全性がないことの認識を高めること及び、運動やスポーツを通してタバコ製品の使用の影響を再認識させる。特にニコチンがドーピング防止規程における監視対象物質に掲載されていることをさらに周知する。そのために、文部科学省で作成された「新体力テスト」を実施する。テスト項目は、握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、20mシャトルラン(往復持久走)及び立ち幅とびの6項目である。 対象者は20歳代の男性で、喫煙習慣をはじめとする生活習慣調査、健康状態のチェック及び体力テスト前日から当日にかけての生活日誌の記録などを行い、体力テストの結果との関連性を解析する。 体力テスト前後で唾液採取、呼気中一酸化炭素濃度測定を行う。また、体力テスト前日から心拍解析装置を装着し、普段の生活状態から運動している状態を通して、心拍変動の解析を行う。採取した唾液は、喫煙習慣を把握するためにコチニン測定(ニコチンの代謝物)を行う。さらに、運動あるいは喫煙に関わる神経伝達物質の代謝物(ホモバニリン酸、3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニルエチレングリコールなど)を測定し、運動習慣や喫煙習慣などとの関係性を解析する。 特にニコチンがアンチ・ドーピングの監視対象物質になった背景は、競技直前にニコチンの興奮作用を利用する目的で無煙タバコを使用した事例があったことが発端である。従って、ニコチンが多く含まれているタバコ製品の使用は、スポーツ選手の健康に有害であり、スポーツの価値を損ね、未成年者に悪影響を及ぼすことが事実として挙げられる。このことを踏まえて、対象者にタバコ製品のリスクを理解してもらう。 さらに、今回の結果を社会発信することで、タバコ対策の重要性を広く認識してもらう。
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次年度使用額が生じた理由 |
対象者は130名を予定しており、協力金や交通費などを計算すると、若干の不足が生じるので、次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は体力テストを実施する。対象者は130名を予定しており、協力金や交通費などを計算すると、若干の不足が生じるので、次年度に繰り越した。使用は、体力テストに関わる参加者への交通費、協力謝礼金(5000円)が主である。また、体力テスト中の安全性を考慮して、飲水用の水の購入、保険料などの支出を計上している。
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