唾液アミラーゼ活性(sAA)や心拍数変動検査は比較的安価で、一般家庭でも実施可能と思われる簡易な検査である。うつ病などの原因の一つと考えられるストレスをこれらの検査で、どの程度まで評価できるかを検証することがこの研究の目的である。 脳神経・筋の検査として病院で実施される過呼吸賦活や閃光刺激(脳波検査)あるいは反復神経刺激試験(筋電図検査)をボランティアに課し、その前後のsAAを測定した結果、sAAは検査後に有意に上昇することを明らかにした。また、これは唾液クロモグラニンA(CgA)とほぼ同様の変化であることを確認した(昨年度まで)。 今年度は、sAAとCgAに加え、5分間の測定で判定できる心拍変動解析による低周波成分/高周波成分比(LF/HF)を求め、検査前後における測定値の変化を、この三者で比較検討した。その結果、sAAが最も敏感にストレスに反応し、CgAとLF/HFはストレッサーの種類によっては刺激後に有意な上昇を示すものの、反対に刺激後低値になる被検者の割合がsAAに比べておおく、ストレスの程度を推定には注意が必要である。 以上、sAAの測定はELISA法を用いるCgAの定量に比べ、圧倒的に簡便であり、心拍変動解析のように5分間安静を保つ必要もないため、一般家庭においても最も有効なストレス評価法の一つであることが明らかとなった。過度なストレスを受けないように、あるいは受けたストレスを上手に発散することができるように、ストレスの程度を自ら知ることは健康への第一歩と考える なお、本年度は血漿中の脳由来神経栄養因子と唾液セロトニンの測定も行ったが、対象者数が少なかったこともあり、再現性のある測定結果を出せず、統計学的な検討はできていない。今後は新たに購入した唾液中ストレスマーカー分析装置を用い、sAAと唾液コルチゾールあるいは分泌型IgAなどとの比較検討を行う予定である。
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