研究課題/領域番号 |
16K01780
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研究機関 | 明治国際医療大学 |
研究代表者 |
鶴 浩幸 明治国際医療大学, 鍼灸学部, 特任講師 (10330044)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自覚的耳鳴 / 触圧刺激 / 鍼 / 円皮鍼 / 指頭 / 経穴 / セルフケア / 東洋医学 |
研究実績の概要 |
平成28年度に頚部や手部の経穴などへの指頭による圧刺激または鍼刺激(刺入深度約4 mm)が自覚的耳鳴を軽減、消失させる場合のあることを報告した。 本研究では圧刺激および円皮鍼(刺入深度約1.5 mm)による刺激が耳鳴に与える影響を検討した。 対象はインフォームドコンセントの得られた健康成人ボランティア11名(平均年齢26歳)であり、耳栓とイヤーマフを装着後に環境音が33dB以下の静かな部屋に入り、安定した明確な耳鳴を感じる者とした。 入室後、以下の介入による変化が検討された。a:頚部(5ヶ所)や手部(1ヶ所)の経穴などに指頭による圧刺激を1箇所ずつ約45秒間行い、b:圧刺激による変化が確認された同部位に対して円皮鍼の貼付を約45秒間行った。bの刺激は変化した耳鳴が元に戻ったことを被験者に確認後に行った。耳鳴の大きさや持続などはvisual analogue scale(VAS)や標準耳鳴検査法1993における耳鳴の自覚的表現の問診票に基づいて作成した評価表により数値化した。耳鳴が変化した場合の各刺激前後の値の比較にはt検定を用いた。 aの圧刺激により耳鳴が変化したのは11例中10例であり、bの円皮鍼刺激では 10例中8例において、大きさや持続の軽減(うち1例は消失)がみられた。aにより変化した場合は、大きさが47.1±22.6→14.8±12.6mm・2.9±1.1→1.2±0.7点、bでは58.5±17.2→25.8±21.7mm・3.5±0.8→1.7±1.2点となり、有意に減少することがわかった。 以上の結果から、圧刺激や円皮鍼刺激により耳鳴が軽減、消失する場合のあることがわかった。圧刺激の応用により、耳鳴に有効な刺激部位を簡便に検出できることが示唆された。これらの結果が、耳鳴軽減に有用で不快感や副作用がほとんどない安価な治療法やセルフケア法の開発につながる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は概ね順調に進んでいる。 現在は、経穴(ツボ)などに圧刺激および皮膚に鍼を刺入せずに触圧刺激を行う方法(円皮鍼タイプの刺激器具を使用、刺入深度0mm)の自覚的耳鳴に対する影響の検討を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、さらに軽微な刺激と考えられる皮膚に刺入しない円皮鍼タイプの刺激器具(刺入深度0mm)を用いて経穴などに触圧刺激を与え、自覚的耳鳴に対する影響を検討する。 対象はインフォームドコンセントの得られた健康成人ボランティアであり、耳栓とイヤーマフを装着後に環境音が33dB以下の静かな部屋に入り、安定した明確な耳鳴を感じる者とする。刺激前に被験者の耳鳴の大きさ・持続・音質などをVisual Analogue Scale(VAS)や標準耳鳴検査法1993 における耳鳴の自覚的表現の問診票をもとに作成した評価表を用いて評価する 。 次に、これまでの研究で明らかになった耳鳴を軽減させる可能性のある部位(風池穴・天柱穴・完骨穴・乳様突起下端・C1横突起部・合谷穴)に1 穴ずつ各30-45 秒間の圧刺激を行い、被験者が耳鳴が変化したと感じた場合にはVAS や評価表を用いて、被験者自身に再度、耳鳴を評価させる。その後、耳鳴が元の状態に戻ったことを被験者に確認した後、圧刺激により耳鳴が変化した同部位に円皮鍼タイプの刺激器具を用いた触圧刺激(刺入深度0mm)を行い、耳鳴が変化した場合にはVAS や評価表を用いて再度評価させる。各刺激は痛みを伴わない程度の強さとし、研究終了後には刺激部位の違和感などの有無を確認する。 統計学的手法を用いて(t 検定など)、耳鳴が変化した場合の有意差(変化の方向性)について検討する。 その結果や本方法を応用した鍼治療などについては、学会発表または論文などで発表したいと考えている。 なお、平成28年度までの研究により、圧刺激では平均1.37-1.39kgfの圧迫(痛みを感じない程度の強さ)により耳鳴が変化することがわかったため、平成30年度に行う研究では、圧トランスデューサー指示計を用いた圧刺激の強さ(kgf)のデータ収集(検討)は行わないこととする(研究の効率化のため)。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は国際学会に参加できなかったため。また、関連論文の作成が和文2本のみであったため、金額に余りが生じた。平成30年度は、平成29年度分と合わせた金額を学会発表や論文作成に使用するようにしたい。
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備考 |
・平成29年度 独立行政法人 日本学術振興会 ひらめき☆ときめきサイエンス(研究成果の社会還元・普及事業)における課題「加齢 による身体の変化と東洋医学(はり治療)を学ぼう」において(実施分担者:鶴浩幸、他〔実施責任者:福田晋平〕)、本研究課題の一部である「頚部・手部の圧刺激や微弱な鍼刺激(円皮鍼)が自覚的耳鳴に与える影響の基礎的研究」を部分的に紹介した。
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