これまでに頚部や手部の経穴などへの指頭による圧刺激または鍼刺激(刺入深度約4mm及び1.5mm)が耳鳴を軽減、消失させる場合のあることなどを報告した。本研究では、指頭による圧刺激や円皮鍼タイプの非侵襲的鍼用器具を用いた触圧刺激(刺入深度0 mm)が耳鳴に与える影響を検討した。 対象はインフォームドコンセントの得られた健康成人ボランティア10名(平均年齢26歳)であり、耳栓とイヤーマフを装着後に環境音が33dB以下の静かな部屋に入り、安定した明確な耳鳴を感じる者とした。入室後に以下の介入による耳鳴の変化が検討された。1.頚部(5ヶ所)や手部(1ヶ所)の経穴などに対する指頭による圧刺激を1箇所ずつ各45秒間行い、2.圧刺激による変化が確認された被験者の同部位に非侵襲的鍼用器具による刺激(貼付)を45秒間行った。耳鳴の大きさなどはvisual analogue scale (VAS)や標準耳鳴検査法1993における耳鳴の自覚的表現の問診票に基づいて作成した評価表により数値化した。耳鳴変化時の各刺激前後の値の比較にはt検定を用いた。なお、本研究は明治国際医療大学ヒト研究審査委員会の承認を得て行われた。 上述6ヶ所に圧刺激を行い耳鳴が変化した部位を確認後(10例中9例)、同部位に非侵襲的鍼用器具を貼付した結果、9例中8例に耳鳴の大きさや持続などの軽減(1例は消失)がみられた。圧刺激により大きさが変化した場合には51.8±24.0→21.5±17.3 mm・3.3±0.8→1.4±0.8点、非侵襲的鍼刺激では54.0±25.1→27.7±16.7 mm・3.4±0.8→1.9±1.1点となり、有意に減少することがわかった。 圧刺激や非侵襲的鍼刺激により耳鳴が軽減、消失する場合のあることが示唆された。指頭での圧刺激の応用により、耳鳴に有効な刺激部位を簡便に検出できることが示唆された。
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