研究課題
[背景]うつ病または抑うつ状態は、健全な生活を阻害する大きな要因であり、その健康影響は増大している。うつ病の原因の1つが、神経炎症にあることが近年注目されている。[目的]一般集団における、慢性炎症・酸化と抑うつ度/幸福度の関係を精査し、うつ病予防の方策を探る。本年度は、詳細な統計解析を行い、各因子の関連性を、交絡因子を考慮した上で、炎症・酸化・抑うつ度について導き出すことが、目的であった。[対象と方法] (1)地域住民約400名を対象とし、抑うつ度を測定し、炎症に関連するサイトカインの血清中濃度を測定し、それを抑うつ度と比較した。(2)さらに、神経炎症および神経酸化傷害に関する過去のデータ(女性労働者133名)を解析し、炎症性サイトカインおよび酸化LDL、n-3多価不飽和脂肪酸とうつ状態の関連性を解析した。[結果](1)IL-17Aは、女性においてのみ、抑うつ度と正の相関を示した(単相関 p<.05)。これは、交絡因子で調整しても同様であった(偏相関 p<.05)。ただし、IL-17Aを横軸とした抑うつ度(縦軸)との関連をプロットしてみると、両者は逆Jカーブを描き、抑うつ度をわずかに示す者で最も低いという結果となった。(2)133名の再解析では、パス解析を行ったところ、精神的ストレスが、IL-6から酸化を介しても抑うつ状態につながる経路も発見した。それらの関係から、n-3多価不飽和脂肪酸の血中濃度は独立していた。さらに、n-3多価不飽和脂肪酸の中のEPAはその機能に注目が集まっているが、幸福感の高さと特に関連した。[結論と課題]性差による違いを解決する課題は残るものの、慢性炎症の抑制とEPAが、うつ病予防に繋がる可能性を示した。
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