研究計画書に基づいて,本年度も平成29年度以降に行う課題に取り組んだ。対象となる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD) 患者も着実に集まり、ほぼ目標としていた症例数 (n=46) に達することができた。その結果,四肢骨格筋量を規定する生化学的および栄養学的因子を同定することができた。当初の予想に反し,NAFLD患者の四肢骨格筋量の低下は,肥満患者よりも非肥満の患者に多いことが判明した。さらに,男性患者の四肢骨格筋量はIGF-1と,一方女性のそれとは骨密度とそれぞれ正の相関を示すことが明らかとなり,性別によって四肢骨格筋量を規定する因子が異なった。登録された患者の約7割 (n=33) から栄養指導することができたので,四肢骨格筋量を規定する栄養学的因子も同定することも可能であった。すなわち,男性患者においては,四肢骨格筋量は摂取エネルギー量と脂肪摂取量と正の相関を示した。 しかしながら,四肢骨格筋量の低下した症例を栄養学的パラメータと四肢骨格筋量を経時的にフォローアップできた症例は数例に限定された。従って、経時的に栄養学的パラメータと四肢骨格筋量がフォローアップできた症例を対象に、栄養介入によってどのような栄養素が四肢骨格筋量に影響を与えるかを検討することに平成30年度から変更し、19例の解析を行うことができた。男性は栄養介入により蛋白および脂肪摂取量を減らすことによって摂取エネルギーが低下し,四肢骨格筋量も低下していた。一方,女性は脂肪と炭水化物の摂取量を減らすことで摂取エネルギー量は低下していたが、四肢骨格筋量には影響を与えなかった。
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