本研究の目的は、少子高齢化社会の指標である、出生率、平均寿命、高齢者割合に及ぼす文化的価値の影響を検証することであった。文化的価値の指標はHofstede (2001)による「権力格差」「個人主義-集団主義」「男性性-女性性」「不確実性の回避」の4つの文化的価値の指標を使用した。文化的価値の指標のデータがある世界59の国や地域の出生率、平均寿命、高齢者割合のデータは、1990年代、2000年代、2010年代を収集した。GDP、高学歴のジェンダーギャップ及び男女の雇用率格差を調整し、重回帰分析を行った。その結果、「不確実性の回避」がすべての年代の高齢者割合と正の関連を示し、1990年代の出生率とも関連がみられた。「不確実性の回避」は、男女の平均寿命においてGDPと交互作用を示し、1990年代の出生率においてもGDPと交互作用がみられた。経済的に豊かな国においては、「不確実性の回避」が高くなるほど平均寿命が延び、出生率が下がっているが、経済的に貧しい国においては、逆の関連が示された。「不確実性の回避」が少子高齢化社会を予測する文化的価値の指標である可能性を示した。
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