研究実績の概要 |
日本の子どもの睡眠時間は世界の中でも最も短い。睡眠習慣は小児期の行動発達様式に影響を及ぼし、小児期の睡眠習慣は成人期の生活習慣病のリスクにも成りうる。小児期より望ましい睡眠習慣を身に付けることは重要である。望まれる子どもの睡眠習慣の啓発のため研究期間中に以下のことを実施した。1)8,600人のデータを基に、幼児期(5歳)の睡眠習慣と行動様式の関連に関する解析、2)小児睡眠習慣質問票(Children’s Sleep Habits Questionnaire: CSHQ)の標準化研究、3)睡眠脳波計と唾液中コルチゾール、尿中メラトニン代謝産物の測定による睡眠効率の解析。樹形モデルによる分析では、5歳時の就寝時間が遅いまたは睡眠時間が短い子どもは発達行動、不安行動、習癖などの問題行動に有意な悪影響があった。長いテレビ視聴、現在の母親の喫煙などの環境因子は、問題行動に有意に悪影響を及ぼした。2)CSHQの標準化の対象群は4歳から12歳の3,158名で臨床群の睡眠障害(入眠困難、夢中遊行等)の54名も加えた。クロンバックα 係は 0.49~0.67で、cut-offは48点(感度62.8%, 特異度 81.4%)を算出した。睡眠習慣の客観的評価のために携帯型1チャンネル脳波計であるSLEEP SCOPE(以下SS)で睡眠記録を行なった。入眠潜時が短いと睡眠効率、第一周期ノンレム睡眠時の比率が高く、覚醒回数が少ないとノンレム睡眠、睡眠効率、第一周期ノンレム睡眠時の比率が高かった。また、睡眠効率が高いとノンレム睡眠、第一周期ノンレム睡眠時の比率が高かった。上記睡眠パラメーターと唾液中コルチゾール値、尿中のメラトニン代謝産物の相関は得られなかった。以上の客観的データを基に望ましい睡眠環境の啓発を教育、医療、家庭にて進めていく必要がある。
|