研究課題
中枢神経(視床下部)が、自律神経を介して、肝臓の糖・エネルギー代謝を調節する仕組みの解明が進められている。代表者も、これまで、中枢神経インスリン作用による自律神経性の肝臓糖代謝調節のメカニズムの解明を行ってきた。肥満や加齢では生活習慣病が増加するが、その病因として、中枢神経インスリン抵抗性の関与が指摘されている。しかし、肥満や加齢によって、自律神経性の肝臓糖・エネルギー代謝調節がどのような影響を受け、その結果、生活習慣病の病態にどのように作用するかについては、解明されていない。そこで、加齢・肥満における生活習慣病の病態理解を深め、新規予防法の開発へと繋げるために、本研究課題では、自律神経を介した肝臓代謝調節の加齢・肥満による変化の解明を行った。まず、野生型マウスにおける自律神経を介した肝臓代謝調節の生理的重要性の解明について解析した。アセチルコリンニコチン受容体阻害剤であるChlorisondamineは、低用量では中枢神経に移行せず、交感・副交感神経の両者の作用を阻害する神経節遮断薬として使用することが可能である。実際に、低用量Chlorisondamine(0.25 mg/kg)投与により、脳室内インスリン投与による迷走神経性肝臓応答が障害(中枢神経性肝臓応答の作用分子である肝臓STAT3のリン酸化の減弱)された。同時に、肝糖新生酵素G6pcのインスリンによる発現抑制もChlorisondamine投与により阻害された。このことから、中枢神経性肝糖新生抑制には、迷走神経が重要な役割を持つことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題では、自律神経を介した肝臓代謝調節の加齢・肥満による変化の解明を行う。平成28年度は、野生型マウスにおける自律神経を介した肝臓代謝調節の生理的重要性を解明することであったことから、おおむね予定通りに進展していると考えている。
本研究課題では、自律神経を介した肝臓代謝調節の加齢・肥満による変化の解明を行う。平成29年度は、自律神経を介した肝臓代謝調節の肥満における変化の解析を行う。具体的には、2週間から12週間までの高脂肪食負荷期間において、2週間ごとに、脳室内インスリン投与後のマウス肝臓を採取し、STAT3リン酸化の評価により、自律神経性肝臓応答障害を来す高脂肪食負荷期間を決定する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cell Reports
巻: 14 ページ: 2362-2374
http://doi.org/10.1016/j.celrep.2016.02.032