研究課題/領域番号 |
16K01817
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
笠原 恵美子 大阪大学, 薬学研究科, 寄附講座講師 (30468269)
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研究分担者 |
関山 敦生 大阪大学, 薬学研究科, 寄附講座教授 (30403702)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ストレス負荷 / グルココルチコイド / サイトカイン |
研究実績の概要 |
過度のストレスが加わると免疫機能が低下し感染リスクが高くなることや、身体の活動能力にも影響を及ぼすことはよく知られているが、その詳細な機序は明らかではない。我々は、心身への精神的なストレスが、神経系のみならず免疫系へ及ぼす影響について分子生物学的な背景を明らかにしてきた。その中で、過度のストレス環境下におかれた際の生体の応答反応の一つとして、ミトコンドリアに焦点をあてて検討を行っている。 ミトコンドリアは、エネルギー代謝において重要な小器官であるが、免疫応答においても重要な役割を担っていることが近年明らかになりつつある。我々は、マウスに種々のストレスを負荷して免疫応答機能を解析し、ストレス負荷による免疫応答の変化についてミトコンドリアの関与を検討している。昨年度までの研究において、マウスにストレスを負荷するとストレスホルモンのひとつであるグルココルチコイドの血中濃度が上昇し、ミトコンドリアのUCP2蛋白質の発現が上昇することを示した。ストレス負荷によるUCP2の発現上昇は、自然免疫において重要な役割を担っているマクロファージのミトコンドリア呼吸機能を抑制し、サイトカイン分泌を低下させることを明らかにした。また、マウスへのストレス負荷により血液中のサイトカイン濃度パターンが変化することを見出した。本年度の研究では、ストレス負荷に対してより感受性が高いマウスとストレス負荷に対して耐性を示すマウスを行動学的な解析により群分けして血液中のパラメータを解析したところ、ストレス関連ホルモン及びサイトカインの血中濃度の様相が両群間で異なっていた。現在これら血中サイトカイン濃度の違いについての更なる解析と、ミトコンドリアの関与を検討中である。ミトコンドリアが関与するサイトカイン分泌機構や血中パラメータを検討することにより、心身のストレス評価・管理のためのバイオマーカーの確立にも貢献したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度より実施してきた、ストレス負荷およびグルココルチコイド投与マウスにおいて、血中サイトカイン濃度(ELISA法およびマルチプレックスアッセイシステム)の網羅的な解析とミトコンドリア代謝変動については概ね計画通りに遂行した。 一方で、自然免疫応答におけるミトコンドリアUCP2の役割を生体レベルで明らかにするために、in vivo siRNAの手法により、マウスマクロファージのミトコンドリアUCP2蛋白質をノックダウンしたマウスの作成に着手した。しかしながら、当初予定していた通りにマクロファージ特異的にUCP2のノックダウンが上手くいかずにモデル動物の作出に成功していない。 したがって、ストレス負荷マウスにおけるUCP2の直接的な関与についてin vivoでの検討に時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の計画であった、マクロファージ特異的なミトコンドリアUCP2蛋白をノックダウンしたマウスの作成が予定通りに進まなかった上ので、今後はcre-loxp部位特異的組換えの手法を用いて、マクロファージ特異的なUCP2欠損マウスの作成に挑戦する。 これらUCP2欠損マウスおよび正常マウスにストレスを負荷した後に、トレッドミルを用いてマウスの運動持久力を解析する。また、マウスの尾静脈より経時的に採血を行い血中サイトカイン濃度の網羅的解析を行うと同時に、ミトコンドリア代謝関連因子について解析を行う。これらの解析結果より、ミトコンドリアUCP2を介したストレス応答制御機構の解明とパフォーマンスへの影響を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) (1)マウスの作出に当初の予定よりも時間がかかっており、これらのマウスを用いて行う動物行動実験の遂行が遅れ未使用額が生じたが、次年度に行う予定の研究計画と併せて実施する。 (2)研究消耗品の納品が遅れ、29年度の研究費に未使用額が生じたが、次年度に行う予定の研究計画と併せて実施する。
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