研究課題/領域番号 |
16K01819
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
小林 成美 神戸大学, 医学研究科, 特命講師 (20379415)
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研究分担者 |
井澤 和大 神戸大学, 保健学研究科, 准教授 (10736185)
篠原 正和 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80437483)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心臓リハビリテーション / 運動療法 / 脂質メディエーター / 炎症 / 心血管疾患 |
研究実績の概要 |
【研究の目的】心血管疾患に対する運動療法の重要性が高まっている。運動療法の心血管疾患に対する効果の一つとして抗炎症作用が想定されているが、その機序は不明である。近年、液体クロマトグラフ質量分析により、炎症収束作用をもつ新規の脂質メディエーターが発見され、その機能解析が開始された。本研究では、運動療法の抗炎症作用と脂質メディエーターとの関連を解明する。 【H29年度に得られた結果】 Ⅰ.運動療法による脂質メディエーター・プロファイルの変化の解明:健常者において運動負荷を行い脂質メディエーター・プロファイルの変化を調べた。心肺運動負荷試験にて運動耐容能を評価した上で、嫌気性閾値(AT)レベルの運動を20分間行い、その前後で採血し、血漿中の脂質メディエーターを解析した。ATレベルの運動では、運動後に炎症惹起性/炎症収束性 脂質メディエーター比が低下することが判明した。効果は数時間持続し、24時間後に運動前の値に戻った。 Ⅱ.脂質メディエ―タ―の血管内皮細胞における効果:前述の有酸素運動にて、変化が顕著であった12S-HHTという脂質メディエーターに着目し、血管内皮細胞に対する抗炎症効果を調べた。12S-HHTはロイコトリエンB4(LTB4)受容体のリガンドであるが、血管内皮細胞における役割は不明である。LTB4受容体の内皮細胞における発現を確認し、ヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)、臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に12S-HHTを用いて刺激し、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β)、細胞接着分子(ICAM、VCAM)等の炎症関連分子の発現の変化を調べた。結果、炎症関連分子の発現に変化は認めなかった。この分子はトロンボキサンA2生成時の副産物として血中に現れると考えられているが、炎症惹起の一つのマーカー分子として臨床応用が可能であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂質メディエーターは質量分析にて行う。質量分析センターに他部署からもサンプル解析依頼が集中し、本研究に関するサンプルの解析が遅れている。心血管患者における脂質メディエーター解析が未完である。
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今後の研究の推進方策 |
Ⅰ.運動療法による脂質メディエーター・プロファイルの変化の解明:引き続き行う。 Ⅱ.疾患、患者背景と脂質メディエーター・プロファイルの関連の解明:心血管疾患患者における脂質メディエーター・プロファイルの運動による変化を調べる。心血管疾患に対する効果的な運動療法を炎症制御の観点から考案する。 Ⅲ.実験動物を用いた分子メカニズムの解明:心血管疾患モデル動物に運動負荷を行い、脂質メディエーターの生体に及ぼす効果を解析する。インスリン抵抗性モデルを使用する。 Ⅳ.in vitro での検討:それぞれの分子の機能について、血管内皮細胞や心筋細胞を用いたin vitroの実験系で調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)血漿中の脂質メディエーターを質量分析にて解析する際に、質量分析センターの解析におけるキャパシティの問題で、想定していたサンプル数より少ないサンプル数の解析しか遂行できなかったため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)引き続き、運動前後の血漿中の脂質メディエーターの変化の解析を進める。並行して、心血管疾患モデル(インスリン抵抗性モデル)動物を用いて、脂質メディエーターが生体内で及ぼす抗炎症効果のメカニズムについての検討を行う予定である。新たに見出された機能不明の脂質メディエーターに関しては、in vitroの実験系でその炎症に関わる機能について調べる。
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