研究課題
【目的】運動療法の心血管疾患に対する効果の一つとして抗炎症作用が想定されているが、その機序は不明である。近年、炎症収束作用をもつ新規の脂質メディエーターが発見された。本研究では、運動療法の抗炎症作用と脂質メディエーターとの関連の解明を目的とした。【結果】Ⅰ.運動療法による脂質メディエーターの変化:心肺運動負荷試にて健常者の運動耐容能を評価し、嫌気性閾値(AT)強度を基準とし、強度を変化させ、各20分の有酸素運動を行った。負荷前後に採血し、血漿中の脂質メディエーターを解析した。AT80%負荷では運動の前後で有意な変化はなかったが、AT100~130%強度の有酸素運動では、運動直後に炎症惹起性(PG群)/炎症収束性(RV群)脂質メディエーター比が有意に低下した。AT140%を超える強度の運動では逆に炎症惹起性(PG群)/炎症収束性(RV群)脂質メディエーター比は顕著に高くなった。従来から言われているAT強度の有酸素運動が心血管病に対し安全かつ有効であるとの説に合致した。Ⅱ.脂質メディエーターの血管内皮細胞における効果:前述の有酸素運動にて、変化が顕著であった12S-HHTに着目し、血管内皮細胞に対する抗炎症効果を調べた。培養内皮細胞に12S-HHTを添加したところ、炎症関連分子の発現に有意な変化は認めなかった。内皮細胞に対する生理活性は無いが、炎症のマーカー分子となる可能性が考えられた。Ⅲ.実験動物を用いた分子メカニズムの解明:運動療法と脂質メディエーターの心不全に対する効果を解析する目的で、インスリン抵抗性マウス(Adipo-PDK1 KOマウス)に対して慢性左室圧負荷(上行大動脈結紮)モデルを作成し、心不全期の糖尿病心筋症を再現した。このマウスに対して、マウス用トレッドミルを用いて運動負荷を加え、血漿、心筋、骨格筋中の脂質メディエーターを解析していく予定である。
すべて 2019
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Nutr Metab Cardiovasc Dis.
巻: 29 ページ: 90-96
10.1016/j.numecd.2018.10.004.
J Cardiol.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1016/j.jjcc.2019.03.011.