研究課題/領域番号 |
16K01821
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
三浦 美樹子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (40447925)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 関節軟骨 / グリコサミノグリカン / コラーゲン / 発生 |
研究実績の概要 |
当研究は、日本人の5人に1人が罹患する変形性膝関節症の根本的治療のため、関節軟骨組織の包括的な評価方法を確立することを目的としている。当研究室で開発されたthermolysinによる可溶化で可能になった軟骨組織完全可溶化法を用い、ラット組織内高分子成分のグリコサミノグリカン(GAG)とコラーゲン(COL)を中心に定量的解析を行っている。COLの定量的解析には、COLに特有のハイドロキシプロリン(HP)量を測定した。 成熟過程における経時的変化について、関節軟骨組織の乾燥重量当たりのマトリックス構成成分とともに、DNA量についても解析し、各発生段階において組織像とともに比較し、関節軟骨の包括的評価を行う指標になりうるのかを検討した。現在までのところ、成熟過程において、軟骨組織のマトリックスを構成する高分子成分比は一様ではなく、GAG/HPの構成比は発生・成熟段階ごとに大きく異なることが分かった。さらに、これらの定量的解析結果は組織学的な構造変化とは必ずしも一致しているものではなかった。GAG/HPの構成比が局所的な組織像では発生段階の判断がつかない未成熟な組織を評価する指標となりうることが示唆された。H30年度は、組織像が成熟した層構造を形成した以降の段階にも対応しうる指標について検討した。組織学的な成熟後は、組織像もGAG/HP比も変化がほとんどなくなりどちらの指標からもその老化段階を判断し評価できないことがわかった。その問題を解決する指標となり得そうな、COLのクロスリンク、二糖解析によるGAG成分の定量的解析を行うための条件設定をすすめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度までにGAGとCOL成分の定量的解析、組織学的な解析、GAGとCOLの局在について発生段階ごとのサンプルの傾向を把握し、免疫組織学的な解析を進めている。組織学的評価とGAGとCOLの定量的解析結果と比較解析し包括的な関節軟骨の指標を検討した。 昨年度はGAGの二糖解析とCOL架橋解析を行うべく、LC-MSを使った定量的解析法の条件設定を行った。条件設定を行うには、成熟過程毎のサンプルの夾雑物が大きく異なるため定量的に比較する条件設定に手間取った。ほぼCOLの架橋解析の条件設定が終わったところである。架橋解析についてのデータはほぼそろっている。二糖解析については条件の設定がおおよそできたこところで、LC-MSの故障のため修理が必要になった。修理後、条件設定からやり直す必要があり、二糖解析の結果が出るに至っておらず予定より遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は関節軟骨組織の大部分を占めるマトリックス成分について発生・成熟・老化過程の経時的な変化に関する詳細なデータが蓄積することで最終的には関節軟骨の包括的な評価方法を確立することである。昨年度より、GAGの二糖解析とCOLの架橋解析を進めることで、より詳細かつ包括的な関節軟骨の評価方法の確立を目指している。架橋解析についてはLC-MSを使った解析法の条件設定がおわり、測定はほぼ終わっているため、解析を進める予定である。二糖解析については、LC-MSの修理も終わったため、再度、解析の条件設定から計画を再開する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H30年度に進める予定であったCOLの架橋解析はLC-MSを使った解析法の条件設定については順調に進み、実際のサンプルについての測定を行った。二糖解析については測定に入る前に、LC-MSが故障し修理が必要となった。一旦、LC-MSを使った作業は中止となり、研究の進行に遅れが生じた。そのため、LC-MS解析に関わる消耗品等の購入ができなかった。
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