研究実績の概要 |
本研究は、以下の3点を明らかにした。 第1:心臓脂肪・異所性脂肪・サルコペニアの存在様式が、生活習慣病、心臓血管病の発症・進展におよぼす病的意義:心臓周囲脂肪が、心房細動発症(Oba K, Circ J 2018.)、心房細動カテーテルアブレーション後再発(Maeda Am J Cardiol 2018)と関係すること、心臓周囲脂肪が、冠動脈疾患の発症と関係すること(Maimaituxun G, Circ J 2018)、心臓周囲脂肪が、左心室拡張能低下と関係すること(Maimaituxun G, Circ J 2020)、SGLT2阻害薬が心臓周囲脂肪を減少させること(Yagi S, Diabetol Metab Syndr 2017)を明らかにした。 第二に心臓脂肪・異所性脂肪由来の生理活性物質を網羅的に検証し、生活習慣病、心臓血管病の病態に関わる分子メカニズムの解明:日本人特定健診集団で糖尿病の有無、男女別に冠動脈疾患のリスクスコアを作成し男性でのみ腹部脂肪が説明因子であることを示した(Hirai, Sci Rep 2019)、腎臓周囲脂肪中のアディポネクチン発現は、腎周囲脂肪量および皮下脂肪、内臓脂肪量と負に相関することを示した(Maimaituxun, Front Endocrinol (Lausanne))。 第三:心臓脂肪・異所性脂肪・サルコペニアを考慮した新しい診療コンセプトの構築:以上より、内臓脂肪、腹部脂肪は、同部位におけるサイトカイン発現レベルを調整し、遠隔臓器である骨格筋、心臓、腎臓、肝臓と臓器連関を示すという従来のコンセプトに新しく、心臓周囲脂肪、腎臓周囲脂肪でのサイトカイン発現を介した臓器連関を有するということを明らかにした。
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