研究課題
申請者らは、これまで高齢者を対象に歩数と体力の関係についての横断調査において、1日の総歩数が8000歩を下回ると歩行能力(歩行速度)の有意な低下が認められることを明らかにしている。そこで本研究では、高齢者が運動・移動障害または死に至るまでの歩数、体力および健康指標を70歳から20年間縦断的に追跡調査し、運動・移動障害発症の予知因子としての歩数の有用性を検討した。その結果、以下のことが明らかになった。1. これまでの研究において、身体活動と死亡率の関係が認められているが、客観的な身体活動の指標である歩数と死亡率との関係については報告されていない。そこで高齢者を対象に1日の総歩数と総死亡率との関係について検討した。その結果、1日の総歩数が8000~9000歩以上になると死亡率が有意に低下することが明らかになった。2. 介護予防においては、高齢者のフレイル状態への移行をできるだけ先送りすることが重要である。そこで最終年度においては、歩数とフレイルとの関係について検討した。その結果、1日の総歩数が8000歩以上になるとフレイル発症が著しく低下することが明らかになった。本研究において、高齢者の運動・移動障害の予知因子としての歩数の有用性が示唆された。また、1日の総歩数が8000歩以上の高齢者においては、フレイル発症が著しく低下することから、高齢者の運動・移動障害の先送りまたは短縮のための身体活動量として、8000日/歩が一つの目安になると思われる。以上の結果から、70歳以上の高齢者においては、1日8000歩以上の歩行は歩行能力の維持・向上およびフレイル予防のに有用と思われる。今後は、高齢者の健康寿命延伸のための身体活動量として8000歩/日の有用性について、縦断的なフィールド調査で明らかにしていく予定である。
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BMC Public Health
巻: 18 ページ: 540-551
10.1186/s12889-018-5434-5