多血小板血漿(PRP)療法は、自己末梢血を遠心分離して得られる血小板を多く含む血漿分画を病変部位に投与する治療法である。作用メカニズムは、PRPに豊富に含まれる様々な成長因子が損傷組織の組織修復を促進することによるとされているが、その全容は明らかになっていない。 まず我々は、マウス膝蓋腱に部分欠損モデルを作成し、修復がPRPにより促進されるかどうか、組織学的にどのような変化が認められるかを解析した。すると、欠損部分にPRPを投与したマウスでは、腱の組織学的な修復が有意に促進されており、特に早期の血管新生とそれに続くコラーゲン配列の修復が有意に促進されていた(小林ら2018年日本整形外科学会)。この検討により、PRPが生体内での腱組織修復を促進することを明らかにした。次に、PRPの組織修復過程に寄与する細胞種を同定するために、マクロファージ(MΦ)に特異的にGFPが発現するマウスを用いて同様の検討を行った。すると、PRP投与群では非投与群と比較し有意に多くの組織修復型MΦが遊走されることを確認した(西尾ら2018年日本整形外科学会)。 過去に我々は、PRPは調製法により含有される細胞種が異なる(血小板だけではなく白血球も含まれ、その数や割合が変化する)事を報告した(小林ら2016年Journal of Orthopedic Science)。そこで、PRPの調製法により、マウス腱損傷部位に遊走されるMΦのサブタイプ(炎症性MΦ/組織修復MΦ)が変化するかを検討した。すると、白血球の多いPRPでは炎症性MΦ、少ないPRPでは組織修復MΦの割合が高くなっていた。このことから、PRPの調整法(質)によっても効果に差がある事を明らかにした。 我々の研究結果は、不明であったPRPによる組織修復作用機序の一部を明らかにし、PRP療法の発展に貢献するものと考えれる。
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