研究課題
動脈硬化の過程において、プラークの破綻は、心筋梗塞などの発症に関与していることから、そのメカニズムを解明することは、重要な課題である。本年度は、Chen YCの開発した破綻モデルを使用し、平滑筋細胞のオートファジーのプラーク不安定性に対する影響を検討した。Atg7f/fマウスにSM22α-Cretgマウスを交配し、血管平滑筋特異的Atg7欠損マウスを作製した。さらに、血管平滑筋特異的Atg7欠損マウスにapoE欠損マウスを交配し、平滑筋特異的ATG7欠損・apoE欠損マウス(KO)とコントロールapoE欠損マウスを作製した。10週令のマウスに麻酔後、頸部を切開し、右総頚動脈を露出し,針金を総頸動脈にそわせた。針金と血管をまとめて6-0ナイロン縫合糸で、分岐部の手前とそこから遠位部の2カ所を結紮した。針金を引き取り、縫合糸のみを残すことにより、血管狭窄モデルの作製が終了した。術後、5週間、高脂肪食で飼育し、右頸動脈を摘出した。組織検体に関してH.E染色、p62染色、鉄染色であるベルリン青染色などを行った。術後5週の右総頸動脈では、コントロールマウスでもアテローマ性動脈硬化の進展に伴い、オートファジーの機能低下のマーカーであるP62の発現が増加していた。一方で、コントロールマウスよりアテローマ性動脈硬化が進展していたKOマウスでは、P62の発現はより増加していた。また、管腔内狭窄率もKOマウスの方が増加していた。さらに、KOマウスにのみ管腔内血栓を認め、アテローマの存在の有無を問わない場合、血栓の形成はKOマウスのみで確認された。ベルリン青染色陽性であった数は、KOマウスで有意に多かった。この病変は、プラーク内出血によるものと考えられた。本研究の結果、血管平滑筋細胞のオートファジーの機能低下はプラークの不安定性に関与していることが明らかになった。
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Autophagy
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Biochem Biophys Res Commun.
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